えっ「打ち切り決定」しても諦めるのは早い? まさかの「大逆転」を見せた人気マンガ
実写化、アニメ化されるような人気マンガのなかには、打ち切り一歩手前だった作品も存在します。そこで奇跡の復活を遂げたからこそ、今こうして名作として名を残している、という作品は意外と少なくないようです。
人気マンガの裏に隠された知られざるドラマ
漫画家は夢のある職業ですが、たとえ連載を持てたとしても、人気が低迷すれば容赦なく打ち切られてしまいます。そのような厳しい世界で打ち切りの危機に遭いながらも、奇跡の復活を遂げ、人気マンガにのし上がった作品も意外と少なくありません。
2025年に再アニメ化の新作を控え、シリーズの累計発行部数は2900万部を誇る『地獄先生ぬ~べ~』も、そのひとつに数えられます。真倉翔先生が原作、岡野剛先生が作画を手がけた同作は、「鬼の手」を持つ小学校教師「ぬ~べ~」こと「鵺野鳴介」が、生徒たちを護るために妖怪や幽霊たちと戦っていくオカルト学園コメディーです。
取り上げる題材は、日本の妖怪や幽霊はもちろんのこと、都市伝説、宇宙人、学校の七不思議などオカルトに関するもの全般で、そのうえ「週刊少年ジャンプ」ならではのバトル展開やお色気要素まで入っていました。
実はこの貪欲さは、「打ち切り」から逃れるための必死の策だったようです。文庫版のおまけコーナー「メイキング・オブ・ぬ~べ~」によれば、連載当初はなかなか人気が安定せず、一時は打ち切りになりかけたといいます。しかし、第6話「河童と鉄棒」の巻でアンケートの順位をグッと上げたおかげで首の皮一枚つながり、それ以降はアンケートの結果をみながら話の路線を随時変更していったとのことでした。
そして「てけてけ」や「エンジェル様」などの有名な怪談ネタも扱った、ド直球の恐怖回で少しずつ人気を取り戻し、今ではオカルトマンガの金字塔として多くの読者から愛され続けています。再アニメ化発表の際には、X(旧:Twitter)のトレンド1位を飾るほど大盛り上がりとなりました。
同じ「週刊少年ジャンプ」の連載作品でいえば、『遊☆戯☆王』も打ち切り危機だったマンガのひとつです。今でこそTCG(トレーディング・カード・ゲーム)の代名詞ともいえる作品ですが、連載が始まった当初は、主人公の「武藤遊戯」がさまざまなゲームで悪人を成敗していくという、1話完結形式の物語でした。「遊戯王カード」は作中で「マジック&ウィザーズ(M&W)」と呼ばれる、遊戯が扱った数あるゲームのひとつに過ぎなかったのです。
ではどういった経緯を踏んで、「遊戯王カード」が作品の主題となったのでしょうか。文庫版第2巻に掲載されている高橋和希先生のあとがきによれば、当時の同作は遊戯がエジプトから来た謎の男「シャーディー」と戦うシリアス長編、通称「シャーディー編」の人気が低く、打ち切りの話まで出ている状態でした。
そこで高橋先生は、「マジック&ウィザーズ」を扱ったエピソードの評判が良かったことを思い出し、再びカードゲームの話をやろうと思い立ったそうです。こうして生まれたのが、遊戯がのちのライバルである「海馬瀬人」と「マジック&ウィザーズ」で戦う「DEATH-T編」でした。もしこのとき路線変更に舵を切っていなければ、今ある「遊戯王カード」は存在しなかったかもしれません。
令和に入ってからは『古代戦士ハニワット』の打ち切り回避劇が、マンガファンの間で大きな話題となりました。同作は『鈴木先生』で有名な武富健治先生が描くヒーローマンガで、双葉社の青年マンガ誌「漫画アクション」で現在も連載中の作品です。
長崎を舞台に、埴輪と土偶が激甚バトルを繰り広げる『古代戦士ハニワット』は、当初単行本の売れ行きがあまり芳しくありませんでした。その結果、2021年に武富先生は単行本第9巻をもって打ち切りを通達されてしまいます。当時連載中だった第2部の内容を切り詰めて、そこで終わらせてほしいとのことでした。
しかし、武富先生が自身のXアカウントで打ち切りを知らせたことから、風向きが変わり始めます。大勢のファンによる連載継続を望む声が続出し、紀伊國屋書店新宿本店ではハニワットフェアを実施、その数か月後には都内で原画展が開催されました。
これにより単行本の売り上げが増加しただけでなく、全巻に重版がかかったことで双葉社は打ち切りを撤回します。そして、第2部を作者の構想通り10巻まで継続させ、第3部も引き続き「漫画アクション」で掲載することを決めたのです。
この奇跡の復活劇は瞬く間に話題となり、武富先生がファンへの感謝と復活劇の裏側を語るオンライントークイベントまで開催されることとなりました。SNSがなかったひと昔前の時代では考えられない、まさかの復活劇といえるでしょう。
(ハララ書房)