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今夜の金ロー『思い出のマーニー』 従来の「ジブリ」とは異なるヒロイン像

米林宏昌監督の長編アニメ『思い出のマーニー』は、主人公となる少女・杏奈がスタジオジブリっぽくないことで話題となりました。つい周囲と距離を置いてしまう杏奈が出会うことになるのが、もうひとりの主人公・マーニーです。金髪の美少女マーニーとは何者だったのでしょうか?

宮崎監督の影響下から離れた作品

『思い出のマーニー』 (C)2014 GNDHDDTK
『思い出のマーニー』 (C)2014 GNDHDDTK

 多感な思春期の少女が体験する、不思議な出会いを描いたスタジオジブリ制作の長編アニメーション『思い出のマーニー』(2014年)が、2020年4月3日(金)21時から「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)で放映されます。本作は『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)で監督デビューした米林宏昌監督の2作目の監督作です。『借りぐらしのアリエッティ』は宮崎駿監督が脚本を手掛けたこともあり、宮崎監督の影響が強く出ていました。その点、『思い出のマーニー』は米林監督が脚本から参加し(丹羽圭子、安藤雅司共同脚本)、独自のカラーを打ち出した作品となっています。

 宮崎作品に登場する女性キャラクターたちの多くは明るくてポジティブな性格なのに対し、『思い出のマーニー』の主人公・杏奈(CV:高月彩良)は周囲と距離を置く、あまり明るいタイプの少女ではありません。幼い頃に両親を失ったというつらい過去を持っている杏奈ですが、杏奈を引き取ってくれた優しい養母の頼子(CV:松嶋菜々子)のことを「おばちゃん」と呼ぶようになるなど、思春期を迎えてますます心を閉ざすようになっていました。

 喘息療養のため、札幌で暮らしていた杏奈は頼子の親戚がいる田舎町で夏休みを過ごすことになります。ぽっちゃり体型の女の子・信子のことを「太っちょ豚!」とディスるなど、かなりのトラブルメーカーぶりを見せる杏奈。そのくせ、寂しがりやでもあります。杏奈の面倒くさい性格は、従来のスタジオジブリのヒロイン像とはずいぶん異なります。

心の動きはアクロバティック

 そんな杏奈が「湿っち屋敷」で美少女・マーニー(CV:有村架純)と遭遇したことから、物語は大きく動き始めます。月光に照らされたマーニーは金髪がキラキラと輝き、瞳は青く澄んでいます。杏奈の前に現れたマーニーは夢のなかの幻影でしょうか、それとも地元で噂となっているおばけなのでしょうか。謎めいたマーニーですが、不思議と杏奈は彼女にだけは心を開くことができたのです。杏奈とマーニーのふたりだけの秘密の時間が過ぎていきます。

 宮崎監督のような、「えっ!?」と驚くようなアニメーションならではのアクロバティックなアクションシーンは、『思い出のマーニー』にはありません。少女同士の内省的な物語です。ですが、米林監督はずっとひとりぼっちだと思い込んでいた杏奈が、マーニーと友達になることで閉ざしていた感情を解放していく様子をとても丁寧に描いていきます。心の動きは、とてもアクロバティックです。宮崎監督とは、異なる資質の持ち主であることが分かります。

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