アーケード→ファミコン移植でガッカリ…変わり過ぎて「唖然」としたレトロゲーム・3選
ファミコンへの移植は、夢と希望、そして容赦のない現実が常に付きまとっていました。移植を経て、どんな作品に一変したのか。特に驚きの大きかった3作品に迫ります。
『源平討魔伝』のファミコン版に心を躍らせ、驚いたあの日
昭和末期や平成初期のアーケードゲームやPCゲームは、機器の性能を活かしたハイスペックな作品が多く、性能的に及ばないファミコンでは完全移植が難しく、いかに工夫して移植するかが腕の見せどころでした。
例えば、アーケードゲームを移植したファミコン版の『ゼビウス』は、巨大な浮遊要塞「アンドアジェネシス」が登場すると、スクロールが一時的に止まります。アーケード版の「アンドアジェネシス」は浮遊していますが、ファミコン版だと地上に設置された要塞のようにも見え、受ける印象は大きく異なります。
このほかにも、フィールド上に描かれていた「ナスカの地上絵」がカットされたり、ゲームバランス上の調整なども行われていたりしますが、全体的な再現度は非常に高く、ファミコン時代の好移植の例としてしばしば名前が挙がります。
『ゼビウス』のような秀逸な移植もある一方で、原作のゲームと比べると驚くほど一変してしまったファミコンソフトも少なくありません。
●美しくてキャラが大きい! 驚きの連続だったアーケード版『源平討魔伝』
1986年に登場したアーケードゲーム『源平討魔伝』は、手応えのあるアクション性に加え、舞台となる鎌倉時代をセンス豊かなデザインと緻密なグラフィックで美しく描き上げ、見る者を皆惹きつけるほどの魅力を放っていました。
ゲームデザインは全般的にアクションが中心で、その見せ方も凝っていました。当時のアクションゲームで主流だったサイドビューと、迷路のようなフィールドを駆け巡るトップビューが状況によって切り替わり、道中のプレイにメリハリを与えます。
そして、「弁慶」や「義経」といったボスと戦う際は、各キャラクターを大きく表示させた「BIGモード」で表現しました。自機である「平景清」の場合、縦画面比で1/3ほどの身の丈に。体躯に恵まれている「弁慶」となると、縦画面比で半分を占めるほどの巨体で描かれます。
ここまで大きなキャラクターを動かすだけでも珍しいのに、『源平討魔伝』は美しく描く点にも注力しており、ひと目見たら誰もが忘れられない作品として記憶に刻まれました。『ゼビウス』の「アンドアジェネシス」で画面いっぱいのボスを表現したナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)が、この『源平討魔伝』でも卓越した表現と技術を見せてくれたのです。
●ファミコンに上陸した『源平討魔伝』に当時のキッズが驚愕
そんな『源平討魔伝』がファミコンゲームになる、という発表は、当時のファミコンキッズに衝撃と歓喜を与えます。あの美しいビジュアルや、巨大な「BIGモード」を家でも楽しめる……まるで夢のような光景を想像し、ファミコン版の発売を心待ちにしました。
しかし、ファミコン版『源平討魔伝』は、ボードゲームにRPGの戦闘を組み合わせたようなゲームになっていたのです。アーケード版のようなアクションゲームではなく、見た目からゲーム性まで何もかも違います。もちろん、「BIGモード」もありません。
『源平討魔伝』の美しいグラフィックや巨大なキャラクターを再現するには、ファミコンの性能では足りないものが多過ぎる……冷静に考えれば当たり前の話ですが、一度夢を見てしまうと、叶うのではと希望を持ち、盲信してしまうもの。その結果、アーケード版とは何もかも違うファミコン版に、別の意味で衝撃を受ける結果になってしまいました。
正確に判断するなら、ファミコン版『源平討魔伝』は移植ではなく、派生作や外伝的な作品だと考えることができます。しかし当時は、派生作などの展開はまだそれほど一般的ではなく、なじみが薄かったのも悲劇を招いた一因でしょう。
ここまで内容が違うなら、タイトルを多少でも変えれば受ける印象も違ったはず。なぜ、全く同じ『源平討魔伝』で発売してしまったのか……様変わりしたゲームの内容よりも、タイトルが同一だった点が最も残念な部分かもしれません。