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『ゼロの使い魔』ヤマグチノボル氏の命日 二次創作投稿者からプロ作家を生んだ

2004年『ゼロの使い魔』で時の人に

『ストライクウィッチーズ : スオムスいらん子中隊がんばる』(KADOKAWA)
『ストライクウィッチーズ : スオムスいらん子中隊がんばる』(KADOKAWA)

 そうして2004年、ついに先生の代表作となる『ゼロの使い魔』が発表されます。美少女に召喚された少年が戦いや日常のなかで愛を育んでいくストーリーに多くの若者が熱狂し、異世界転生作品として巨大なブームを巻き起こしました。

 また、序盤のストーリー構成がしっかりしているため、主人公であるサイトの代わりに別のキャラクターを放り込むだけで簡単に二次創作が可能となっており、さまざまな作品の主人公やオリジナルキャラクターを使った作品が小説投稿サイトに無数に書き連ねられ、多くの人に創作の楽しさを味合わせてくれました。二次創作投稿者のなかにはのちにプロの作家やライターになった方もいます。ヤマグチ先生が現在のライトノベル界やシナリオライター業界にもたらした影響は、計り知れないものがあると言えるでしょう。

 筆者も『ゼロの使い魔』を読み魅力的なキャラクターのとりこになったひとりです。ルイズ、タバサ、キュルケ、アンリエッタ、ティファニア、シエスタ、ジェシカなどお気に入りのキャラクターは大勢います。一番のお気に入りはキュルケですが、コルベールとくっついてしまったのが残念なところです。

『ゼロの使い魔』がエポックメーキングとなった要素はたくさんあります。そのなかでも大きかったと感じているのが、B100オーバーのハーフエルフ、ティファニアの存在です。彼女の登場以前、エルフと言えば『ロードス島戦記』のディードリットのような貧乳キャラがメインでした。やはり『ロードス島戦記』のピロテースで多少大きくはなりましたが、そこを超え「エルフでも巨乳でいいんだ」という新たなイメージを作り上げたことは、後に続いた創作者たちにとってのかせを取り払う大きな役割を果たしてくださったと筆者は考えています。

 ヤマグチ先生の逝去により一度は絶筆を覚悟した『ゼロの使い魔』でしたが、生前に残してくださったプロットを元に、志瑞祐先生(代表作:『精霊使いの剣舞』)の手により完結に至ったのは、それだけヤマグチ先生が『ゼロの使い魔』がファンや関係者に愛されていた証左に他なりません。『ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊』も築地俊彦先生の手により『サイレントウィッチーズ スオムスいらん子中隊ReBOOT!』としてリメイクされています。闘病中に放送されたアニメの4期も「ヤマグチ先生の医療費を稼ごう!」と製作現場の方が話していたと聞いています。

 素晴らしい人が先に逝ってしまう理不尽は何度経験しても慣れません。本当に、惜しい人を亡くしました。謹んで、ご冥福をお祈り申し上げます。

(早川清一朗)

【画像】『ゼロの使い魔』魅力的なキャラクターたち(6枚)

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