『呪術廻戦』完結も残された伏線が大量に 宿儺の過去が明かされる日は来るのか?
天使と堕天とは

「来栖華」は「天使」を名乗る術師を受肉した「死滅回遊」のプレイヤーです。天使の目的は「堕天」の撃破であり、堕天の正体は宿儺でした。宿儺は平安時代の日本で活動していた術師であり、天使と堕天というキリスト教的な構図にミスマッチさを感じます。
しかも来栖華には文字通り天使の羽があり、あらゆる術式を消滅させる術式「邪去侮の梯子(ヤコブのはしご)」を使います。ヤコブの梯子は天使の梯子ともいわれ、旧約聖書に登場するヘブライ人の族長、ヤコブが夢に見た天国へ続く梯子のことです。天使は明らかに日本にルーツを持つ術師ではないでしょう。
キリスト教はフランシスコ・ザビエルによって1549年に日本に伝わってきたとされています。しかし聖徳太子の時代に日本やってきた渡来人の一派「秦氏(はたし)」が古代キリスト教の一派であるネストリウス派(景教)のユダヤ人だった、という説もあります。
術式の名前が旧約聖書由来だったり、宿儺を堕天と呼んだのも天使という術師が秦氏の末裔だったりしたと考えれば辻褄(つじつま)が合います。吹き出しひとつで断片的に出された情報からの推測なので真実がまったく不明のままなのは残念なところです。
●宿儺の過去と人生を変える2度の機会
『呪術廻戦』において圧倒的強者であり、傲慢なポーズを崩さなかった宿儺は、最終回でついにその本音をあらわにしました。実は異形の忌み子として産まれ、虐げられてきた宿儺は復讐者であり、臓腑(ぞうふ)にうごめく呪詛に焼かれないよう暴れまわっていたのです。復讐者という生き方は弱者のポジションですから、それを悟らせないよう傲慢な絶対強者のポーズをとっていたのでしょう。
では復讐者としての人生を選ばなかった場合はどうなるのでしょうか? 生き方を変える機会は2回あったとされ、そこにはふたりのキーパーソンがいるようですが、どんなドラマがあったのかは不明です。
どうやらひとりは「裏梅」らしいのですが、もうひとりの巫女は背を向けたまま顔も名前も分かりません。ふたりとも女性ということで、もしかしたら宿儺には恨みを忘れ、自分を愛してくれる女性とともに静かに暮らす、という選択があったのでしょうか。
こうしてみると『ONE PIECE』が過去の因縁をしっかり描くのに対し『呪術廻戦』では過去のエピソードがほとんど描かれていないことが分かります。特にすべての起源である平安時代は謎だらけです。続編や番外編として復活する際の布石でしょうか?
もしそうだとしたら、ぜひ宿儺が生きていた時代を描いてほしいところです。『呪術廻戦』平安京編とかあったらうれしいですね。
(レトロ@長谷部 耕平)