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『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に当時アンチがワラワラと増えたワケ 放送開始20年

作品が進むにつれ変化していったもの

シンにもステラ(右)とのドラマなどがあったものの…画像は小説版『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』第2巻 原作:矢立肇、富野由悠季/著:後藤リウ(KADOKAWA)
シンにもステラ(右)とのドラマなどがあったものの…画像は小説版『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』第2巻 原作:矢立肇、富野由悠季/著:後藤リウ(KADOKAWA)

『DESTINY』の話になるとよく話題に挙がるのは、主人公の話でしょうか。放送開始した直後はシンの一択でした。ところが作品が進むにつれ、キラ、アスラン、シンの3人が主人公という形へと変化していきます。

 これは、シンが主人公としてうまく立ち回れなかったからかもしれません。後年、福田己津央監督は作品序盤の段階で、「シンを主役のまま物語を最後まで進めるのは難しい」と語ったそうです。

 確かに序盤の物語は、アスランの視点から物語が進んでいく印象がありました。続編である以上、前作の人気キャラの存在は大きなものになるのは当然で、スタッフも使い勝手の良さから重宝したのでしょう。

 これに拍車をかけたのがキラの活躍でした。序盤を観ていくと分かりますが、キラの出番は極力抑えようとスタッフも考えていた節が見受けられます。ところが2クール以降では物語を大きく動かす役割を果たすようになり、その存在はアスラン以上に作品の中心となっていきました。

 そして、いつの間にか『DESTINY』は3人の主人公が紡ぐ物語へと変化していきます。もともと前作『SEED』でも福田監督の当初の構想とは異なる展開になっていく、いわゆる「ライブ感」を重視した作風が好評を得ました。そう考えると、より作品を良いものにしていくためには、この方針転換は正しいものだといえるかもしれません。

 この、前作のキャラクターの続編での立ち位置というものは、どんな人気作品でも問題になります。どう扱うかでスタッフの力量が問われるといっても過言ではないでしょう。その意味で『DESTINY』は前作キャラクターの扱いが良すぎたため、新規キャラクターたちの活躍を描き切れなかったといえるかもしれません。

 前作キャラクターを前面に出す方法は間違いではないでしょうが、これによって新規キャラクターの魅力を出し切れませんでした。この部分をきっかけにファンの不満は徐々に大きくなっていきます。もちろんほかにもいくつかの要因があったのでしょうが、作品に対する批判が次第に多く見受けられるようになりました。

 当時はネットでの書き込みも一般的になってきた時期だったことから、掲示板などに過激なファンが集まり、物語やキャラクター、時にはスタッフに対しての不満が噴出するようになります。そうした経緯もあって、いわゆる「アンチ」と呼ばれる存在が徐々に表面化しました。

 こうした時代背景も放送当時の『DESTINY』の評価に大きな影響を与えた要因でしょうか。一定数の評価を得た作品であった一方、批判的な意見を唱える声が予想以上に大きかったのかもしれません。

 単純な商業面で見ていくと、DVDソフトや主題歌、挿入歌CDの売り上げも好調なものでした。ビデオ、DVDが合計330万枚、主題歌、挿入歌CDが合計560万枚というセールスを記録したそうですから、ヒット作品といって問題ない数字でしょう。

 もっともプラモデルの売れ行きは、「ガンプラブームの再来」とまでいわれた『SEED』の時に比べ、目標値には達したものの数字を下げたそうです。そう考えると、前作以上という期待値には届かなかったものの、ヒット作といえるほどの収益をもたらしたといえるでしょう。

 本放送中はどうしてもライブ感が重視され、冷静に作品を観られないものです。放送から20年が経った今なら、より冷静な作品評価ができるかもしれません。

(加々美利治)

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