「ヒットしたとは言いづらいけど」 忘れがたい「20年前」のマンガ実写化映画
20年前の実写化作品といえば、どのようなものが思い浮かぶでしょうか。なかにはユニークな設定の作品や、改変などにより原作者が激怒した作品もありました。
原作者激怒の事件も? 20年前の実写作品たち
これまで、多くのマンガやアニメの実写化作品が世に送り出されてきました。今年2024年はあまりにも原作に忠実な『ゴールデンカムイ』(原作:野田サトル)や、改変が見られるもホラー映画として高い評価を受けた『サユリ』(原作:押切蓮介)などが話題を集めましたが、今から20年前の2004年には、どのような実写化作品が注目を集めていたのでしょうか。
実写化映画では、10月9日に公開から20周年となる『デビルマン』(原作:永井豪)や、紀里谷和明さんの監督デビュー作となった『CASSHERN』などのほか、さまざまな話題作がありました。なかにはヒットしたものの原作者との関係性で物議をかもした作品や、賛否が分かれた作品もあります。
●『CUTIE HONEY キューティーハニー』
大人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を手がけた庵野秀明さんが監督を務め、話題となった『CUTIE HONEY キューティーハニー』は、永井豪先生のマンガ『キューティーハニー』の実写化作品です。
本作は、アニメ独特の演出を実写で再現するため、「ハニメーション」と呼ばれる特殊な撮影手法が採用され、俳優がひとコマずつ実際にポーズを決めて撮影する技法が使われたことでも知られています。
少女型アンドロイドの主人公「如月ハニー(演:佐藤江梨子)」が、世界中の宝石などを狙う悪の組織「パンサークロー」と戦う物語で、本作は原作を踏襲しつつ一部オリジナル要素を盛り込んでいました。
たとえば、原作では高校生だったハニーが、実写版では派遣のOLに設定変更され、衣装も体内に内蔵された「Iシステム」で生成されるという独自の要素が加わりました。このため、ハニーは普段ランジェリー姿で過ごしている、という設定も追加されています。
戦闘シーンにおいても、原作同様に露出度の高いコスチュームを身に纏った佐藤さんが、美しいスタイルを披露しながら敵と戦う姿が見どころのひとつとなりました。また、ランジェリー姿でストレッチをするシーンや、商店街を走り回る場面など、挑発的な描写も多く、当時の観客を驚かせました。しかし、興行成績は振るわず、制作会社のトワーニはこの映画を最後に倒産してしまいます。
ネット上では「色気はあったけどアニメのようなキュートさが物足りなかった」「アニメのような演出を実写でやると冷める」と批判的な声もあがる一方、「庵野監督だけでしか撮れない作品で、特撮好きにはたまらなかった」「佐藤さんの超絶ボディに釘付けになってしまった」など、独自の魅力が好きという人もおり、良くも悪くも記憶に残る作品として語り継がれています。
●『海猿』
同題マンガが原作の『海猿』(作:佐藤秀峰/原案・取材:小森陽一)は、NHKで実写ドラマ化され、2004年にはフジテレビ制作で映画化、その後、同局で2005年にドラマ化もされた作品です。ドラマ放送後に映画は4作目まで制作され、メガヒットを記録しました。
2004年の映画1作目は、原作の途中で描かれた「潜水士訓練編」を一番最初に持ってきて、厳しい訓練で生まれる友情と仲間の死などを描いた和製『トップガン』のような内容になっています。今でも本作が好きという人は多いようですが、フジテレビ版は1作目の時点で原作と比べてさまざまな改変がみられました。
まず、主人公「仙崎大輔(演:伊藤英明)」が海上保安官になった動機は、「幼少期の事故の経験から海の安全を守りたい」という原作に対し、フジテレビ版では「セールスマンの世界に疲れ、もともと海が好きだったから」というものに変わっています。「元セールスマン」という『踊る大捜査線』の「青島」を連想してしまう改変に、驚いた人も多かったのではないでしょうか。
また、変更する必要が少ないと思われるヒロインの名前も変わっており、原作では「浦部美晴」という名前が「伊沢環菜(演:加藤あい)」になっています。
映画は4作も公開されましたが、原作者の佐藤先生は2024年に自身のブログで、映画化に納得していなかったことを告白して話題になりました。佐藤先生は、当時の映像化の企画が、原作者である自身をないがしろに進行していったことなど語っています。
そして、佐藤先生は作品を観て「クソ映画でした。僕が漫画で描きたかったこととはまったく違いました」と当時の心情を記し、その後の契約更新では、テレビ局にアポなし取材されたことや、関連本が無断で出版されたことなど不誠実な対応を理由に、同作の続編制作やTV放送も許可しなかったことも明かしていました。
キャラ設定だけでなく、ストーリー構成もオリジナルとなった実写映画について、原作ファンからは「尺もあってか物語を省略している感が否めない」「工藤の設定の改変が納得いかん」「ヒロインが記者だったのに違う仕事にされてるのがアカンやろと思ってたな」といった不満の声がある一方で、「人命救助する海上保安官の熱さに感動した」と内容に満足した人もいたようです。もう配信サービスで観ることもできない作品ですが、2012年に実写版シリーズの影響で海上保安学校の受験者が急増したニュースが出るほどの話題作でした。
●『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』
『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』は、故・藤子不二雄A先生の『忍者ハットリくん』を原作とした実写映画で、主演は香取慎吾さんでした。物語は、伊賀の里で修業を積んだ「ハットリくん」こと「服部カンゾウ」が上京し、さまざまな事件を巻き起こすという内容です。
基本設定は原作を引き継いでいますが、ストーリー構成は実写版のオリジナルとなっています。ハットリくんが、東京で住民が謎の男に襲われ仮死状態にされる怪事件を解決しようと奔走する物語です。
香取さんの演技や、ハットリくんのかつてのライバル「ケムマキケムゾウ」を演じたお笑いコンビ「ガレッジセール」のゴリさんとの戦闘シーンなど、見どころが満載の本作は、2004年邦画興行収入ランキングのトップ10に入るヒット作となりました。
本作に対して、ネット上では「香取くんのハットリくんはすごく適任だと思った」「マヨネーズご飯を食べるシーンがめちゃくちゃ印象に残ってる」と評価されている一方、「忍術を使うシーンやアクションは迫力がなくて残念だった」「設定から無理がありすぎた」と賛否が分かれているようです。
(LUIS FIELD)