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アニメ『北斗の拳』シンとの決着までやたらアニオリ展開だった切実なワケ 放送40周年

マンガのヒットをきっかけにTVアニメ化された『北斗の拳』は、その完成度の高さからより多くのファンを生み、作品の知名度を上げました。しかし、そこに至るためには多くの課題があったのです。

アニメ化の際にファンが感じた不安要素とは

シンとの決着までを収録。「北斗の拳一挙見Blu-ray第一部『ユリア永遠に…そしてシンよ!』」(東映ビデオ)
シンとの決着までを収録。「北斗の拳一挙見Blu-ray第一部『ユリア永遠に…そしてシンよ!』」(東映ビデオ)

 本日10月11日は、1984年にTVアニメ『北斗の拳』が放送開始した日です。今年2024年で40周年となりました。原作マンガと共に『北斗の拳』人気をけん引したTVアニメの魅力について振り返ってみましょう。

『北斗の拳』は「週刊少年ジャンプ」連載の人気マンガで、初期の「ジャンプ黄金期」を支えたヒット作品でした。武論尊先生の原作、原哲夫先生による作画という布陣のアクション格闘技系作品で、「ジャンプ」の発行部数が400万部に達した時代の看板作品です。

 このように『北斗の拳』の人気はアニメ化以前から大きなもので、TVアニメ化はファンにとって念願のことでした。アニメ制作は「東映動画(現在の東映アニメーション)」で、『Dr.スランプ アラレちゃん』や『キン肉マン』など、それまで数々のジャンプ作品のTVアニメを手がけていたことから、当時のファンにはなじみの布陣だったかもしれません。

 しかし、TVアニメ化されることにファンが感じる不安要素もいくつかありました。原先生のち密に描き込まれた線をアニメで再現できるのか、主人公である「ケンシロウ」の「あたたた……」といった独特の「声」を誰がどのように演じるのか、そして人体がバラバラになるという残酷な描写をTVで放送できるのか……という点です。

 作画に関しては数々の作品に携わった須田正己さんがキャラクターデザインを手がけ、原先生の絵に限りなく近づけました。またシリーズディレクターが芦田豊雄さんだったことも大きかったと思います。なぜなら芦田さんも優秀なアニメーターでした。この布陣が当時としては最高峰の作画を支えたのでしょう。

 ケンシロウの声についてはひとつの逸話があります。ケンシロウ役を決めるオーディションでは、後にその声を担当する神谷明さんと、放送では「シン」役となる古川登志夫さんが競いました。

 この時、戦闘シーンにおいて、練習では普通に演じていた神谷さんが本番になった途端、実際のTVアニメでおなじみの「怪鳥音」で演技を始めたそうです。これを聞いた時、古川さんは「やられた」と思ったと漏らしていました。

 これはTVを見たファンも同じで、筆者も初めてケンシロウのセリフを聞いた時は、それまでのヒーロー調の神谷さんの演技とは異なる演技方法に、度肝を抜かれたことを覚えています。神谷さんが新境地に達した瞬間だったのでしょう。

 そしてファンからもっとも懸念されていたのが、原作では最大のカタルシスとなる悪党の人体破壊シーンでした。これにはアニメスタッフも細心の注意を払ったようです。シルエット処理や透過光、画面の反転などの演出で、アニメ作品として見られるよう工夫されました。

 このほかにも、敵をあり得ないくらい巨体に描くアニメ的表現でリアル感を消し、原作では暴力的ととらえられそうなセリフもソフトなものに差し替えています。こうした演出方法でアニメ『北斗の拳』は、ゴールデンタイムのTVアニメにふさわしいものとなりました。

 その甲斐もあって、放送当時には大きなクレームはなかったといわれています。ただし、日本PTA全国協議会が1986年にまとめた第1回「好ましくない番組ワースト10」では、第7位に選ばれていました。アニメ作品では唯一のランクインです。

 こうしてTVアニメとしても人気作品となった『北斗の拳』ですが、実はほかにも問題点がありました。

【画像】逆に「よく1時間半で収めたな!」と感心すら覚えるのがこちらのハリウッド実写版です ケンシロウの雰囲気は出てる…かも?

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