『トトロ』まっくろくろすけの「声」←再現不可能? 日本語では“ない”言葉だった
『となりのトトロ』に登場する「まっくろくろすけ」の鳴き声って特徴的ですよね。あれは何と言っているのでしょうか? 「はにゃ」「わや」「あな」……果たして正解はあるのでしょうか?
なんて鳴いてるの?
宮崎駿監督の『となりのトトロ』には、いまなお愛される印象的なキャラクターがたくさん登場します。例えば「まっくろくろすけ」は子供たちの心をわしづかみにするかわいらしい姿をしています。
その名の通り、ホワホワの真っ黒い体に大きい目が特徴で、劇中では「まっくろくろすけ」と呼ばれていますが、勘太のおばあちゃんが言うように「ススワタリ」というのが昔ながらの名称のようです。同じく宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』にも細長い手足がある「ススワタリ」が釜爺のところでせっせと働く姿が描かれ、ファンを驚かせました。
さて、この「まっくろくろすけ」ですが、彼らに関する未解決の案件があります。
『トトロ』の劇中、「まっくろくろすけ」たちが「サツキ」と「メイ」の家から夜空へと去っていくあの名シーンを思い浮かべてください。久石譲さんの名曲「風のとおり道」のメロディに乗せて「ワヤ!」と鳴き声をあげて飛んでいくあのシーンです。
いま、当たり前のように鳴き声を「ワヤ!」と書きましたが本題はそこにあります。果たして「まっくろくろすけ」はなんと言っているのでしょうか。そもそもあれは「声」という認識で合っているのでしょうか?
筆者は「ワヤ!」と聴こえていましたが、調べる限りファンの間でも「アワ」「ワラ」「ヤパ」「アナ」などなど……表記が揺れています。『となりのトトロ』が公開されて35年以上が経過していますが統一はされていません。どうしてこんなにも表記が揺れてしまうのでしょうか。その理由は彼らの声の作り方にありました。
「まっくろくろすけ」のあの特徴的な声の正体は、久石譲さんが作った合成音声です。「ピグミー族」というアフリカ大陸の中央部で暮らしている狩猟民族の声から「ア」の音だけを抽出し、それをシンセサイザーで加工することで、あの独特の声を作り出しました。
まず、あの声は「まっくろくろすけ」の声という認識で合っていました。そして表記が揺れてしまう理由も明らかです。本来、日本語にない発声、発音を加工したものなら50音に収まりきらないのは当然のことでしょう。
一方、「金曜ロードショー」の公式X(旧:Twitter)アカウントはあの声を「ワキャッ!」と表記しています。『となりのトトロ』が「金曜ロードショー」で放映されるたびに、同様の投稿がなされているので、今後もしかしたら「ワキャッ!」が統一表記になっていくかもしれません。
(片野)