原作者激怒!? 日本テレビ版『ドラえもん』が封印された「本当の理由」を考える
日本テレビ版は「失敗作」じゃなかった?

日本テレビ版が「失敗作」だったという評価に対しては、異を唱える人が少なくありません。安藤健二氏は実際に映像を観た感想として「予想以上に面白かった。シュールな味わいもあるし、細かい作りこみも感じた」「頭で考えたり道具に頼るのではなく、思いつきと行動で何とかしようとする体育会系のノリが新鮮だった」(表記ママ)と前掲書で述べています。
同じく映像を観た産経新聞の記者は、「ストーリーや作画はしっかりした印象だった。(中略)70年代のアニメと承知して見れば、それほど違和感はない」(表記ママ)と感想を記していました(MSN産経ニュース「【幻のドラえもん】(上)テレ朝版アニメの前に「日テレ版」があった」2009年1月10日)。
2006年に有志による日本テレビ版の鑑賞会が開かれた際、集まったF先生ファンのあいだからも好評の声がいくつも上がり、「失敗作」という声は出ませんでした。当時の制作スタッフだった真佐美ジュン氏によると、非常に丁寧な作りでリテイクも多かったそうです。また、スケジュールが圧迫されたこともなかったといいます。
日本テレビ版を特集した同人誌『neo Utopia』43号によると、第1クールはテンポのゆったりした下町人情もの、ドラえもんの声優が交代した第2クールはスラップスティックなドタバタコメディになっていました。チーフディレクターの上梨満雄氏は同誌のインタビューの中で「前半の方が好きでした」と語っています。
ドラえもんがのび太の保護者のように振る舞うテレビ朝日版と異なり、日本テレビ版のドラえもんは失敗が多く、のび太と対等の仲間として描かれていました。ドラえもんが主体となってトラブルを巻き起こすエピソードもあります。これは1969年に連載が始まった初期の原作と共通しているテイストです(ただし、1974年から刊行が始まった単行本では、F先生の意向でこのようなエピソードがほぼ割愛されています)。
また、日本テレビ版では原作どおりに始まっても途中からオリジナルの展開になるエピソードが多く見られます。これは当時の原作が低年齢向けだったためページ数が少なく、アニメに必要な尺にするために補う必要があったからです。
真佐美氏の証言によると、文芸担当の徳丸正夫氏がパイプ役となり、脚本、絵コンテ、キャラクター設定や色指定などについてF先生のチェックを受けていたそうです。