「悔しすぎる」「引継ぎ希望」 作者死去で悲しみの声が相次いだ「未完の名作マンガ」
好きな漫画家さんの唐突な訃報は、マンガファンにとっては一番悲しい出来事です。追っていた作品が未完になってしまうこともあり、「続きが読めない」事態となるも、なかには奇跡的に完結まで描かれた作品もありました。
ネームとプロットが残っていたおかげで…
読者にとって好きな作品の連載が続くことはうれしいものですが、当然連載がいつまでも続く保証はなく、ときには作者の死去によって未完のまま物語の幕を閉じることもあります。さまざまな伏線が回収されていない状態でも、ネームやプロットが残っていれば、アシスタントが引き継ぐこともありますが、そうではなかった場合、謎は永久に謎のままです。
たとえばSFマンガの金字塔と言われている『超人ロック』は、幸いにもネームとプロットが残っていたために、アシスタントが引き継いで最終話が描かれました。
同作は、永遠に生き続ける不死身の超能力者「超人ロック」を通じて、さまざまな人間模様を描いたSFマンガです。1967年の同人誌から始まり、その後に商業誌での連載を経てシリーズ化され、昭和から令和にかけて新作が描き続けられていましたが、作者の聖悠紀さんが、2022年に肺炎によって72歳で他界されたため、最新シリーズの『超人ロック 憧憬』(以下、憧憬)は、未完で終わると思われていました。
ところが、残っていたネームとプロットもとに、長年連れ添ったアシスタントの佐々倉咲良さんが作画を担当したことで、『憧憬』の最終話が描かれることになったのです。『憧憬』の最終話まで読んだ人からは、「コメディタッチあり、シリアスあり、とシリーズの幅の広さを象徴する一冊だった」「アシスタントの手による最終話だったけど、これは確かに聖氏の作品と感じる」と好評でした。しかし、その一方で、「まだ明かされていない謎が気になる」「まだまだ分からない点があるので、誰かが連載を引き継いでほしい」などの声もあがっています。
そのほか惜しくも未完で終わってしまった作品といえば、白土三平さんが手がけた長編劇画『カムイ伝』も外せないでしょう。同作は、幕府による厳しい身分制度がしかれていた江戸時代の日置藩を舞台に、主人公「カムイ」が差別に屈することなく、生きる誇りと自由を得るために奮起する物語です。
1964年から1971年にかけて「月刊漫画ガロ」(青林堂)で連載され、1988年から2000年まで「ビッグコミック」(小学館)にて続編の『カムイ伝 第二部』が描かれています。完結となる第三部までの構想があるされていたものの、第二部が中断されて以降、続編が発表されないままに時が進み、2021年に作者である白土さんが誤嚥(ごえん)性肺炎ために、89歳で逝去されたため、三部は幻の続編となってしまいました。
また、第二部の作画を担当していた白土さんの弟である岡本鉄二さんも、白土さんが亡くなられたあとすぐに、間質性肺炎によって88歳で他界されています。長きにわたって連載された名作の「未完確定」を悲しむ人は多く、ネット上には「三部がいつ始まるかと待ちわびてただけに、とても残念でならない」「外伝も含めて大好きだったシリーズの未完は悔しすぎる」などの意見が数多く見受けられました。
未完に終わって悲しみの声が相次いだ作品といえば、代表作『スケバン刑事』の作者として知られる和田慎二さんのマンガ『傀儡師(くぐつし)リン』もあげられるでしょう。
『傀儡師リン』は、人形操りの闇の流派「鹿嶋操流」の家に生まれた主人公「鹿嶋リン」が、鹿嶋家に秘蔵されていた10体の謎の人形を巡って、ライバルの「傀儡師」と人形同士の戦いを繰り広げるバトルマンガです。
2006年から「ミステリーボニータ」(秋田書店)にて連載が始まったものの、作者の和田さんが2011年7月に虚血性心疾患のため、61歳という若さで逝去され、7月6日に発売された、同誌の2011年8月号を最後に未完となりました。次号の9月号では、「和田慎二先生 メモリアルページ」が設けられ、さまざまな漫画家からメッセージが寄せられています。
たとえば『修道士ファルコ』や『エロイカより愛をこめて』を手がけた青池保子さんからは、「大きな体のなかには繊細で優しい心がいっぱいの和田先生」、『フーちゃん』などの作者である、いまいかおるさんからは「昔からノンビリのくせに、妙にせっかちなヤツだったけど…これは、あんまりでないかい!?」といった言葉が綴られていました。
全14巻となった『傀儡師リン』をすべて読んだ人からは、「話として区切りがついたところで終わってるけど、やっぱり悲しくて悔しい」「すごく面白くなってきたところだったのに……残念でならない」などの声があがっています。
(LUIS FIELD)