バットマン不在でも大ヒット 映画『ジョーカー』はなぜ地上波で放映されないのか?
ヴィラン(悪役)として知られる「ジョーカー」を主人公にした実写映画『ジョーカー』は、2019年に公開され、社会現象級の大ヒットを記録しました。孤独な男が犯罪者に変貌する姿を、ホワキン・フェニックスが見事に演じています。Netflixなどの配信や劇場での再上映は行われていますが、地上波放映はされていません。その原因を探ります。
日本でも興収50億円超のヒット作
アメコミ界を代表するスーパーヒーロー、バットマンの宿敵といえば、ピエロのメイクをしたジョーカーです。ジョーカーの誕生秘話を描いた実写映画『ジョーカー』(2019年)は、世界興収10億ドル突破という大ヒットを記録しました。日本でも、R15指定ながら50.3億円という興収結果を残しています。
2024年10月11日(金)からは、その続編『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』(PG12)が劇場公開されます。ジョーカーに変身するアーサーを引き続きホワキン・フェニックスが演じ、謎の女性・リーをレディー・ガガが演じていることでも話題を呼んでいます。
大ヒット映画は、続編の公開に合わせて地上波テレビで放映されることが多いのですが、『ジョーカー』に関しては、「金曜ロードショー」(日本テレビ系)でも、「土曜プレミアム」(フジテレビ系)でも、現在のところ放送予定はありません。
バットマンが登場しないにもかかわらず、『ジョーカー』が大ヒットした理由と、地上波テレビで放映されない原因を考察したいと思います。
バットマンとは「親ガチャ」の関係
主人公のアーサーはゴッサムシティで暮らす、心優しい独身男性です。認知症ぎみの母親(フランセス・コンロイ)の介護をしながら、派遣ピエロとして働いています。みんなを笑顔にすることが、アーサーの生きがいです。あまり若いとはいえないアーサーですが、いつか一流のコメディアンになることを夢見て、慎ましい生活を送っていました。
しかし、ピエロメイクで街で仕事をしていたアーサーは、不良少年たちに襲われてボコボコにされてしまいます。また、緊張すると笑いが止まらなくなるという神経症を患っているアーサーは、市の福祉課でカウンセリングを受け、精神安定剤をもらっていましたが、福祉予算の削減で打ち切られることに。悪いことが、次々とアーサーの身に降りかかります。
ついてないときは本当についてないもので、アーサーは派遣ピエロの会社から解雇を告げられてしまいます。地下鉄で酔っ払ったサラリーマンたちに絡まれたことをきっかけに、アーサーの溜め込んでいた怒りが爆発。極悪メイクを施した凶悪犯「ジョーカー」へと変貌を遂げることになるのです。
バットマンは登場しませんが、後にバットマンとなる幼き日のブルース・ウェインはアーサーと出会うことになります。大富豪トーマス・ウェイン(ブレット・カレン)の家に生まれたブルースと貧しい家庭に育ったアーサーは、いわば「親ガチャ」の関係です。生まれ育った環境によって、人生が大きく左右されるというシビアな現実が、『ジョーカー』では描かれています。
本作でアカデミー賞主演男優賞を受賞したホワキン・フェニックスの熱演、コメディ映画『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』(2009年)を大ヒットさせたトッド・フィリップス監督のテンポのよい演出もあって、生放送中のトーク番組で起きる惨劇まで、目が離すことができません。