『Gのレコンギスタ』の10年 富野監督は何を描きたかったのか…真の完成は劇場版です
難解さで知られてしまった『Gのレコンギスタ』、しかしそれはTV版しか観ていない人の感想かもしれません。その後制作された劇場版5部作こそ真の完成形といえる理由、そして富野監督は果たして何をやりたかったのかという観点から振り返ります。
ガンダム35周年プロジェクトのひとつとして送り出された『Gレコ』
「ガンダム」シリーズのひとつ『ガンダム Gのレコンギスタ』がTV放送開始されてから、2024年10月でちょうど10周年となりました。
富野由悠季監督が『∀ガンダム』から15年ぶりに送り出したTVシリーズの「ガンダム」作品であり、「機動戦士ガンダム35周年プロジェクト」(2014年発表)的にはアニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』(2015年)と並ぶものです。同時期に『ガンダムビルドファイターズトライ』もTV放送され、人びとはガンダム三昧の日々に恐怖……ではなく狂喜しました。
その始まりは、雑誌「ガンダムエース」2010年12月号(KADOKAWA)に富野監督が寄稿した小説、『はじめたいキャピタルGの物語』です。世界設定やキャラクターもほぼそのままであり、アニメ放送まで足かけ5年がかりだったことになります。
物語の舞台は、唯一のエネルギー源「フォトン・バッテリー」が宇宙から無料でもたらされる「リギルド・センチュリー(略称はRC)」という時代です。それを運ぶ軌道エレベーター「キャピタル・タワー」に宇宙海賊と謎の機体にして主役メカ「G-セルフ」が襲来し、主人公「ベルリ・ゼナム」が自衛組織「キャピタル・ガード」の候補生として迎え撃ちます。
見事にGセルフを鹵獲したベルリは、海賊部隊の少女「アイーダ・スルガン」と出会い、成り行きから海賊の戦艦「メガファウナ」に乗り込み、宇宙と地球との争いに巻き込まれていく……というあらすじです。
地球上では大陸国家である「アメリア」(かつての北米大陸に相当)と「ゴンドワン」(ほぼ欧州地域)が10年以上も大陸間戦争を繰り広げています。かたや宇宙では月の裏側に「トワサンガ」というスペースコロニー国家(かつてのジオン公国/サイド3)があり、さらに金星方面には「ビーナス・グロゥブ」というすごい技術を持つスペースコロニー群があります。
宇宙側は地球にフォトン・バッテリーを無償で提供しており、そのかたわらで、トワサンガには「ドレット軍」、ビーナス・グロゥブにはジット団という反地球的な過激派がいます。いずれも独自に地球奪還作戦「レコンギスタ」を企んでおり、それぞれ地球側の不穏分子に進んだ(過去の技術だが、地球では失われている)技術によるモビルスーツや戦艦を提供して、戦乱を悪化させていく……という図式です。
そのような社会情勢を背景に、本作はベルリとアイーダが「デカい船に乗って地球から月、金星へと旅する」というロードピクチャー的な作りとなっています。「宇宙から地球に軍事的に里帰りしたい一部のスペースノイドが、地球の武装組織と手を組んで混乱が広がる」という意味では、『∀ガンダム』の構図を踏襲しつつ、勢力の数が増えたぶんだけややこしくなっていました。