『Gのレコンギスタ』の10年 富野監督は何を描きたかったのか…真の完成は劇場版です
劇場版5部作こそ『Gレコ』真の完成形!

そうした「伝わらなさ」を誰よりも認識したのが、ほかならぬ富野監督でした。「映画でいうところの0号、試作品になってしまった」との反省を込めて、2019年からは劇場版5部作を相次いで送り出しました。
単なる編集版ではなく、新作カットを追加して再構築したものです。「TV版で決定的に欠けていた部分を手直ししてますね」とご本人も言っており(週プレNEWS「ガンダム40周年。富野由悠季監督が劇場版『Gのレコンギスタ』を語る『“脱ガンダム”のつもりが、“ガンダムの呪縛”に囚われていた』」2019年11月29日)戦いのあいまにひと言ふた言足すばかりか、幕間でじっくり状況を説明するシーンまで加えられています。
ベルリのライバルである「マスク」こと「ルイン」も、TV版ではことあるごとに「自分は『クンタラ』出身」だからと嫉妬心や敵がい心を語っていたものの、「クンタラ」が何かは言及していません。そこは劇場版でも長々と説明はしないものの、ベルリはエリートの血筋、自分は虐げられた人々(被差別階級)の末えいだと、負の感情を「伝わるように」口にしています。
ほかGセルフの最凶兵器「フォトン・トルピード」が艦隊を一瞬で殲滅できる(光子に変換し、バッテリー補充も出来る)恐ろしさがきっちり描写され、マスクとベルリがスペースコロニーを背景に超高速バトルを会話付きで繰り広げるなど、物語を充実させつつ、「ロボットアニメ」としての満足度も爆発的に跳ね上がっています。
おそらく『Gのレコンギスタ』をTVシリーズだけしか観ていない人たちは、「ワケの分からない消化不良アニメ」として記憶していることでしょう。富野監督が本当に伝えたかったことを受け取るためにも、絶対に劇場版5部作を観るべき! お子さんがおられるなら、家族で鑑賞することをお勧めします。
(多根清史)