バトルには勝ったけど為す術ない事態に? 「主人公死亡エンド」が悲しすぎた名作
ハッピーエンドやバッドエンドなど、物語の終わり方にはいくつか形があります。そのなかでも特に衝撃的な終わり方といえば、主人公が死んでしまう展開ではないでしょうか。主人公は何があっても死なないという、マンガやアニメの常識を覆した「主人公死亡エンド」を振り返りましょう。
ゲーム史に残る「死亡エンド」の傑作がアニメで蘇る
アニメやマンガの主人公といえば、基本的にどれだけ窮地に立たされても死なないものです。物語のラストは主人公の勝利に終わる……という認識が当たり前になってしまいがちですが、それはただの思い込みだったのかもしれません。数あるアニメやマンガのなかには、主人公が死んで終わる作品も少なくありませんでした。
たとえば「主人公死亡エンド」のひとつに数えられる作品が、『PERSONA3 THE MOVIE #4 Winter of Rebirth』です。「PERSONA3 THE MOVIE」シリーズは、アトラスの人気ゲーム『ペルソナ3』を劇場用にアニメ化したもので、『#1 Spring of Birth』『#2 Midsummer Knight’s Dream』『#3 Falling Down』『#4 Winter of Rebirth』と四季になぞらえた4部作構成となっています。
その完結編となる『#4 Winter of Rebirth』では、衝撃的な事実が明かされました。本編のラスボスを招来させる死の象徴「デス」が、主人公「結城理(ゆうきまこと)」の体内に封印されていたことが発覚するのです。おまけに全人類の「死」に対する深層心理の集合体であるデスは、決して倒すことはできないという絶望的な事実も明らかとなり、この第4作はほぼ全編、暗いムードのなか進行していくことになります。
そして迎えた最終決戦で、主人公が下した決断は、自らの命を使ってデスの変貌した姿「ニュクス」を封印することでした。正確には戦いが終わった後も、理はなんとか生き延びるものの、もはやその肉体に生命は残っていません。戦いの数か月後、彼は仲間たちに見守られながら静かに息を引き取りました。
また奥浩哉先生のマンガ『いぬやしき』も、主人公死亡エンドで有名な作品です。冴えない高齢サラリーマンの「犬屋敷壱郎(いぬやしき いちろう)」は、ある日突然宇宙人に改造され、全身兵器のロボットになってしまいます。犬屋敷はその身体を使って人助けに励んでいましたが、同じタイミングで全身兵器に改造されていた高校生「獅子神皓(ししがみ ひろ)」は殺戮のためにその力を使っていました。
最終的に犬屋敷が彼の凶行を食い止めたものの、今度は地球に巨大隕石が押し寄せて来るという大ピンチに見舞われます。そして獅子神は罪滅ぼしのため、犬屋敷は愛する家族のため、宇宙空間まで飛んで行って自爆し、隕石を破壊するのです。
冴えないおじいさんだった犬屋敷は、大きな力を得てもそれを正しく使う善性の持ち主でした。そしてその善性が殺人鬼と化してしまった獅子神を変え、ふたりは地球を救うヒーローとなります。この美しくも哀しい幕引きには、当時多くの読者が涙しました。
主人公死亡エンドでいえば、荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険』も忘れてはなりません。同作最大の特徴は、部が変わるごとに時代が移り変わり、主人公も交代する大河ストーリーにあるでしょう。これまでに第9部までシリーズ化されてきましたが、主人公が死亡してしまう部も少なくありませんでした。
第1部の「ジョナサン・ジョースター」の死も衝撃ですが、特に主人公死亡エンドの印象が強いのは、第6部の『ストーンオーシャン』ではないでしょうか。シリーズ初の女性主人公「空条徐倫(くうじょう じょりーん)」は、第3部の主人公「空条承太郎(くうじょう じょうたろう)」の娘という設定でした。もちろん本編には承太郎も登場しますが、ラスボスである「プッチ神父」との戦いにおいて、なんと父娘そろって死亡してしまうのです。特に、時を止める最強の「スタンド」である「スタープラチナ」を持つ承太郎の死は衝撃でした。
最後には、徐倫が刑務所内で出会った少年「エンポリオ」が、彼女と仲間たちの意志を受け継いでプッチ神父を倒します。世代を超えてジョジョたちに受け継がれてきた「黄金の意志」が、エンポリオ少年を凶悪な敵と立ち向かう戦士に変えたのです。
徐倫たちは死んでしまいましたが、その意志は確かに受け継がれていることが分かり、最後の最後にはさらに落涙必至の展開も用意されていました。後味としては、かなり爽やかな死亡エンドだったといえるでしょう。
(ハララ書房)