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プレステ版『FF7』発売時に…ゲーム流通の革命児「デジキューブ」の始まりと終焉

1996年にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)が設立したデジキューブは、コンビニエンスストアでのゲームソフトの販売を手掛け、プレイステーション用ソフト『ファイナルファンタジーVII』の発売もあり、ゲーム業界の流通に大きな革命を起こしうる存在となりました。

コンビニに現れた大きな端末

2020年4月10日発売『ファイナルファンタジーVII リメイク』(スクウェア・エニックス)
2020年4月10日発売『ファイナルファンタジーVII リメイク』(スクウェア・エニックス)

 1996年にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)が設立した「デジキューブ」は、コンビニエンスストアでのゲームソフトの販売を手掛け、ゲーム業界の流通に大きな革命を起こしうる存在となりました。しかしながらさまざまな要因により業績は低迷、挙句の果てには銃撃される事件まで発生し、2003年11月26日に東京地裁に自己破産を申請、負債総額95億円の負債を抱え倒産の憂き目をみました。デジキューブの端末が設置された頃にコンビニでアルバイトをしていた経験を持つライターの早川清一朗さんが、当時の記憶を語ります。

* * *

 ある日、いつものようにバイトをしていたお店に行くと、店内の風景が少し変化していました。確か、それまでは単行本や小説が並べられていた棚がふたつあったのですが、そのうちのひとつが撤去され、代わりに小さな画面が付いた回転式の棚が置かれていたのです。これが、「デジキューブ」の専用棚だったのです。
 
 その日は、既にシフトに入っていたバイト仲間から、ゲームソフトの売り方についての簡単な説明を受けました。棚に置かれているカードをお客様が持ってきたら、レジのなかにある小さな金庫に収められているソフトを出して販売する。特典などがあったらそれも絶対に忘れないようにと念を押された記憶があります。他のお店ではどのような形式だったのかは知りませんが、筆者のバイト先ではおおむねこういう形で販売していました。プレイステーションの本体も入荷しており、レジ後方の棚の上の方に見やすい形で展示されていました。ソフトの方もいくらか入荷しましたが、サービス開始当初はたまに興味本位で購入していくお客様がいるくらいでそれほど勢いがあるようには感じませんでした。

 その大きな理由は、定価販売だったことです。本体もソフトも、家電量販店に行けば割引価格で購入できるので、わざわざコンビニで購入する理由がなかったのです。

 そんなことは「デジキューブ」側も当然承知しており、強力な一手を打ってきます。それは『ファイナルファンタジーVII』(以下、『FFVII』)初回出荷分220万本の内8割をコンビニで販売するという、強烈なものだったのです。

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