作者逝去で連載終了、かと思いきや? “執念”で復活を遂げた伝説的マンガ3選
連載途中で作者が亡くなってしまった場合、そのマンガが完結を迎えることはほとんど絶望的です。実際に作者逝去によって未完で終わってしまった作品も数多くありますが、そこから奇跡の復活を果たした作品も少なくありません。
一度は連載終了するものの、まさかの復活!
マンガ作品が未完で終わってしまう理由はさまざまありますが、そのなかでも最も悲しい終わり方が作者急逝による連載終了ではないでしょうか。そうなった場合、物語の続きを読める可能性はほぼゼロですが、だからといって望みを捨てるのはまだ早いかもしれません。
例えば『ベルセルク』(白泉社)の三浦建太郎先生は、2021年5月に急性大動脈解離のため亡くなりましたが、親友で漫画家の森恒二先生監修のもと、三浦先生に師事したスタジオ我画のスタッフによって連載が再開されました。三浦先生が亡くなってからおよそ1年後の出来事です。このように『ベルセルク』のほかにも、奇跡の復活を遂げた作品はまだまだ存在します。
さいとう・たかを先生の『ゴルゴ13』(小学館)といえば、いわずと知れたスナイパーコミックの金字塔です。掲載誌「ビッグコミック」が創刊された1968年に連載が始まり、今やその単行本巻数は200巻以上にのぼります。2021年4月に200巻到達で『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のギネス記録に並び、同年7月発売の201巻をもって「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」のギネス世界記録を更新しました。
実は作者のさいとう先生はギネスに認定されてから間もなくして膵臓がんのため亡くなっています。享年84歳でした。
さいとう先生は生前から「自分抜きでも『ゴルゴ13』は続いていってほしい」と考え、早くから自身が設立した「さいとう・プロダクション」に分業制を取り入れていました。人物、背景、乗り物、武器などの対象ごとにそれぞれ担当者を設けたのです。
その結果、脚本スタッフや「ビッグコミック」編集部協力のもと、プロダクションのスタッフたちによって連載は続き、2024年9月には最新214巻が発売されています。「自分抜きでも『ゴルゴ13』は……」というさいとう先生の思いは、しっかり形となって実現されているようですね。
同じく臼井儀人先生の『クレヨンしんちゃん』(双葉社)も、スタッフの手によって奇跡的な復活を遂げました。同作は2009年に臼井先生が事故で急逝したことにより、「月刊まんがタウン」2010年3月号をもって1度連載が終了しています。しかし長年手を組んでいたスタッフの手で新たな物語が創作され、2010年9月号より『新クレヨンしんちゃん』というタイトルで連載が再開されました。
なお掲載誌の「月刊まんがタウン」は2023年に休刊となってしまいましたが、『新クレヨンしんちゃん』はWEBマガジン「まんがクレヨンしんちゃん.com」で今もなお連載中です。コミックスは1巻から新たに発売され、2024年8月には最新14巻が刊行されました。
ほかふたつと比べると少し毛色が異なるものの、戸部けいこ先生の『光とともに…~自閉症児を抱えて~』(秋田書店)もまた、奇跡の復活を果たしたマンガ作品と呼べるかもしれません。同作は自閉症児とその家族の歩みを描いた物語で、2004年には篠原涼子さん主演で実写ドラマ化も果たしました。
2000年に連載をスタートして以降、主人公「東光(あずま ひかる)」の誕生から成長過程をつぶさに描いてきた戸部先生ですが、その途中で中皮腫を発病し、2010年に亡くなってしまいます。享年52歳でした。
とはいえ闘病中も執筆を続けていたそうで、最終15巻には戸部先生が遺したラスト2話分のネームが掲載されています。そのあと2016年に掲載誌「フォアミセス」で「『光とともに…』が遺したもの」という特集が組まれた際には、戸部先生の遺稿にマンガ家で盟友の河崎芽衣先生がペン入れを行い、正式な完結編として掲載されました。河崎先生がペン入れしたラスト2話は、のちに発売された『光とともに…』別巻にも収録されています。
(ハララ書房)