「原作改変」あっても評価された実写版 「最後はマンガより好き」「短すぎるのがな」
マンガの実写版での「原作改変」というと、どうしてもネガティブな印象を抱きがちですが、まれなケースとして、逆に原作通りにしなかったことで評価された実写化作品もあるようです。
みんな大好き「ラーメンハゲ」がまさかの女性に
自分の好きなマンガが実写化される際には、その内容を忠実に再現してほしいというのがほとんどの原作ファンの本音でしょう。しかし、実際は尺の都合やコンプライアンス面、その他さまざまな理由から、多かれ少なかれ改変が加えられるものです。とはいえ原作改変が必ずしも悪というわけではなく、なかには「別物としてアリ」「改変して正解だった」など、称賛されるケースも存在します。
●『らーめん才遊記』
久部緑郎先生、河合単先生による『らーめん才遊記』は、ラーメンの魅力をとことん掘り下げたラーメンマンガの金字塔です。前作『ラーメン発見伝』ではラーメンマニアの「藤本浩平」が主人公だったのに対し、『らーめん才遊記』ではフードコンサルティング会社「清流企画」の新入社員「汐見ゆとり」が主人公となり、経営不振に陥ったラーメン屋の問題を次々に解決してきます。
そして彼女の上司であり、『らーめん才遊記』では主人公の師匠兼ライバルだったのが「芹沢達也」です。ラーメンに毛が入らないようにスキンヘッドにしている芹沢は、ファンから「ラーメンハゲ」の愛称で親しまれ、『ラーメン発見伝』『らーめん才遊記』に続く新シリーズ『ラーメン再遊記』では主人公に上り詰めるほどの人気キャラクターでした。
ところが2020年にテレビ東京系列で放送された実写ドラマ『行列の女神~らーめん才遊記~』では、芹沢が女性になるという大胆な改変が加えられています。苦境にあえぐラーメン店を救うという設定はそのままに、「清流企画」の社長が女優の鈴木京香さん演じる「芹沢達美」に変わっていたのです。
人気キャラの性別変更に対してファンの間で賛否が分かれていましたが、実際に放送されたドラマの評判は上々でした。ネット上には「鈴木京香とラーメンハゲのシンクロ率が高い」「ハゲてないのに、鈴木京香さんが完全にラーメンハゲだった」「いい感じに改変してて何だかんだで面白かった」などの声があがっています。
そもそも芹沢は強圧的な物言いが多く、そのまま実写化するとゆとり(演:黒島結奈)に対してハラスメントめいた印象を与えかねないので、そうした意味でも改変は成功だったというファンもいるようです。また、一部ファンから「ラーメンハゲなら『俺の見た目をそのまま実写化して視聴率が取れるか?原作通りなら売れるなどというナイーヴな考え方は捨てろ』って言いそう」「ラーメンハゲなら自ら提案しそう」など、現実主義的な芹沢役ならではの意見も出ていました。
●『DEATH NOTE』
『DEATH NOTE』といえば、名前を書かれると死んでしまう死神のノート「デスノート」をめぐる物語です。新世界の神になろうとした「夜神月(やがみ らいと)」と、数々の難事件を解決してきた世界一の名探偵「L」による天才同士の頭脳戦バトルを描いています。
これまでドラマや映画など複数回にわたって実写化されている同作ですが、実は原作と同じストーリーで実写化されたことは一度もありません。なかでも2006年の藤原竜也さん主演の映画『デスノート』とその続編にあたる『デスノート the Last name』は、原作と異なるラストでありながら、今でも実写化成功例の筆頭に挙げられる評判の高い作品として知られています。
本作は、原作では叶わなかった「夜神月とL(演:松山ケンイチ)の決着」という形で幕を下ろしており、これは原作ファンの間で「こう終わってほしかった」という願望の声も多かった結末でした。そのため「個人的に原作よりも好きな終わり方」「原作を超えた実写映画」と称賛する声が今も多く出ています。原作と違い、自分と代理人「ワタリ(藤村俊二)」を犠牲にして勝利したLが主人公のスピンオフ映画『L change the WorLd』も公開され、ヒットしました。
●『幽☆遊☆白書』
2023年にNetflixで実写化された『幽☆遊☆白書』のドラマシリーズも、大胆な改変が行われるも、好評を博した作品のひとつです。原作は『HUNTER×HUNTER』の作者としても知られる冨樫義博先生の同名大ヒットマンガで、ひょんなことから悪の妖怪と戦う霊界探偵となった少年「浦飯幽助」と、その仲間たちの戦いが展開されていきます。
原作は、不慮の事故で命を落とした幽助(演:北村匠海)が幽霊として人助けをして回る「霊界死闘編」、生き返った幽助が霊界探偵となる「霊界探偵編」、そして人気が爆発したバトル長編「暗黒武術会編」という流れでした。それに対して実写版では「暗黒武術会編」のラスボス的存在である「戸愚呂弟(演:綾野剛)」との戦いを終着点として、「霊界探偵編」のエピソードをそのラストバトルへ集約するような形で、ストーリーが再構成されています。
幽助がトラックに轢かれる冒頭の事故の原因に、原作では後で出てくる「魔回虫」を絡めるなどの工夫で、原作マンガ13巻あたりまでの内容が全5話、時間にしておよそ4時間に上手く詰めこまれていた印象です。またバトル要素に特化した分、全体的にシリアスでダークな雰囲気となっており、コミカルな場面が多かった原作とはまたひと味違った『幽☆遊☆白書』に仕上がっていました。
もちろん「5話だと物足りない」「もっと見たい」「短いが故に感情移入は難しい」「欲を言えば原作初期の霊絡みの事件を解決する日常寄りの回も観たかった」など短さに関する不満の声もあったものの、実写化発表後の批判ムードを覆し「アクションが素晴らしい」「別パターンの幽白として楽しんだ」「序盤の展開が整理されていて、マンガ版より導入が良い」「ちゃんと好きな人たちが頑張って実写化してくれたのが伝わってくる」と、好評寄りの実写版となっています。
(ハララ書房)