腕足なぞ飾りな水陸両用MS「ゾック」の見せ場のなさは異常…お前は何がしたかったん?
ゾックは『機動戦士ガンダム』のジャブロー攻略戦に投入された水陸両用MSながら、「ガンダム」にあっさり撃墜され見せ場はほぼありませんでした。ゾックは、どのようなコンセプトで生まれた機体だったのでしょうか。
圧倒的な火力を誇る新鋭機のはずが…!?
TVアニメ『機動戦士ガンダム』に登場した「ゾック」というモビルスーツ(MS)を覚えているでしょうか。ジャブロー攻略戦に参加し、ずんぐりとしたフォルムに前後対称という特殊なデザインが目を引く機体でした。
それまでのMSとは一線を画す、異形にも思えるビジュアルをした機体は、どうして生まれたのでしょうか。
●MSでケタ外れの高火力を実現した移動砲台?
型式番号MSM-10「ゾック」は、アニメの第29話「ジャブローに散る!」に登場します。連邦軍のジャブロー基地攻略に向けて、ゾックが配備されたことを知った「シャア・アズナブル」が「使えるのか?」と問いかけると、部下は「水陸両用、ジャンプ力もザクの数倍だと……」と返答しています。
そのゾックは、実際どのような性能だったのでしょうか。
頭頂高23.9m、全備重量は229tもあります。MS「ゴッグ」が18.3m、159.4tだったのと比べると、かなり大型で重さがあります。
それもそのはず、ゾックはジオンの量産MSとしてメガ粒子砲を装備した最初期の機体なのです。それも頭頂部に1門(フォノンメーザー砲という説もある)と、肩部に前後4門ずつの、合計9門のメガ粒子砲を備えています。
モビルアーマーのような高火力を実現するために、当時のMSとしては考えられないほどの大出力ジェネレーターが必要でした。その重量と引き換えに失ったのは機動力です。ゾックの重量を支える脚部は頼りなく、全体のシルエットを見るとアンバランスさがうかがえます。
また移動は熱核ジェットエンジンによるホバー移動と、スラスターによるジャンプになり、アニメ上では鈍重な動きに見えました。水陸両用とはいえ、陸上での運動性能は低く、水中以外の機動力は期待できなかったと見るのが自然でしょう。
皆川ゆか著「総解説ガンダム事典」(講談社)のゾックの項には、「移動砲台的な機体で、後のMA開発に影響を与えたともいわれる」と書かれています。
つまりゾックは、「9門のメガ粒子砲による高火力を戦場に運ぶための機体」なのです。脚部は胴体を支えるための役割くらいしか果たせず、しかもホバー移動することから、おなじみ「ジオング」以上に「足なんて飾り」なMSといえそうです。
さらに言うと、ゾックの両腕には「アイアン・ネイル」と呼ばれる鋭いツメがあるものの、これを用いた格闘シーンは皆無でした。ゾックの機動力を考えると、せいぜい砲撃時のアンカー的な役割しか果たせそうにないことから、実は「腕も足も要らなかった」機体なのかもしれません。