【漫画】息子が不登校に… 母がすべきは”学校に行くべき”価値観を壊す!?
小学4年生のとき不登校になった息子。習いごとも行けず、外出もできなくなってしまった息子の姿に悩み、必死に解決の糸口を探す母でしたが、なかなか思うようにいきません。あるとき、親子でカウンセリングを受けることになり……。息子の不登校と、親が価値観を壊す大切さに気付くまでを描いたマンガがInstagramで公開され、「不登校の壁って、分厚いですよね」と話題に。作者の川口真目さんにお話を聞きました。
母、学校へ行ってほしい気持ちと葛藤!

息子の不登校でカウンセリングを受けて気付いたことを描いたマンガ「子どもが不登校になったので、いろんな人に頼ってみた。」(全3話)が、Instagramで合計1800以上のいいねを集めて話題となっています。
小学4年生のとき、不登校になってしまった息子。学校に行けずつらそうな息子の様子を見守りながらも、学校へ行ってほしい気持ちと葛藤する母でしたが、自分の価値観を壊して息子の不登校と向き合うことを決意して……。息子の不登校に家族で悩み、一歩踏み出すきっかけを描いた作品に、読者からは、「不登校の壁って、分厚いですよね」「親として勇気をもらいました」「お子さんも含め、ご家族で頑張りましたね」などの声があがっています。
このマンガを描いたのは、Instagramやnoteなどでマンガを発表している、漫画家兼イラストレーターの川口真目さんです。2021年11月には、書籍『子育てしながらフリーランス』(左右社)を出版しました。川口真目さんに、作品についてのお話を聞きました。
ーー息子さんが不登校になったとき、特にどのようなことが大変だと感じましたか?
相談できる人がいなかったことです。傷ついて弱っている息子を見て、どうにかしてあげたいのに何をしていいのか分からず、ただただ苦しい毎日を過ごしていました。学校でも不登校に詳しい先生と出会えず、スクールカウンセラーも月1回しか相談できず、専門家の探し方も分からない、という状況でした。マンガでは最初から相性のいいカウンセラーに出会ったように描かれていますが、実際には何か所もカウンセリングルームを訪ねました。
ーーカウンセリングを受けたあと、息子さんに対して、具体的にどのようなサポートをしましたか?
3つあります。ひとつ目は「学校や習いごとを休ませること」、ふたつ目は「なんとか学校に行かせなければ、という考え方をやめること」、3つ目は「親子で楽しむこと」です。
当時、息子は学校に行こうとすると、よく体調を崩していました。それは言葉で「学校へ行きたくない」といわなくても、明らかに体がSOSのサインを出していました。親として大きな覚悟が必要でしたが、「本当に大切なことは、子供が健康でいること」と何度も再確認し、学校や習いごとなどをすべて休ませました。自宅では、「学校」という概念を忘れるために、学校を連想させるランドセルや教科書、制服などは見えないところに片付けました。
学校を休ませても、「今日は学校へ行かないのかな……」「いつになったら行くんだろう……」などと親が心配していると、子供は敏感に察知して余計に動けなくなってしまいます。しかし、「なんとかして、学校に行かせなきゃ」という考え方をやめることはとても難しかったです。なぜなら、私たちが小さい頃から、親や先生、社会のなかで「行くのが当たり前」とされてきたからです。
子供の未来を考えることはたしかに大切です。しかし、心身ともに疲弊しているときは、ネガティブなことばかり考えてしまい、気持ちが沈んでしまいます。幸せな未来にするためにも、いったん未来のことは考えず、いまを楽しむことがとても大切なんだと気付きました。それが1番不登校の子供が回復する方法だと思ったからです。私と息子の場合は、息子が小さい頃から好きな科学館に行ったり、平日の朝にカフェでモーニングをしたり、一緒にゲームを楽しんだりしていました。
ーーそのようなサポートをし続けることで、息子さんはどのように変化していきましたか?
息子が不登校で傷ついていた時期は、それまで当たり前のようにできていたことができなくなりました。例えば、留守番や習いごとなど。それが、先ほどの3つを心がけたことで、回復し始めたんです。それからは、近所を散歩したり、一緒に買い物に出かけたりと、徐々にできることが増えていきました。いまでは学校とフリースクールに行く日を自分で決め、「何のために、学校やスクールに行くのか」を考え、行動できるようにもなりました。不登校になる前よりも、心身ともに強くなった気がしています。
ーー最近の息子さんの様子はいかがですか?
フリースクールで農業を体験する合宿に参加したり、経営を学ぶ授業に参加したりするようになりました。学校でも、信頼できる先生と出会い、ほぼ毎日登校しています。
不登校の経験は大変でしたが、「みんなと違う自分でも、親や周りの人が理解して受け止めてくれる」と知ってから、自発的に動いてくれることが増えましたね。
ーー読者のなかにも、いままさにお子さんの不登校に悩んでいる方がいると思います。皆さんに向けて、アドバイスやエールをお願いします。
近年、日本の小中学校における不登校児童生徒は、約30万人といわれていますが、不登校に対する世間の目はまだまだ冷たいですし、理解も広くありません。ですが大変なことだからこそ、向き合った先に、本当に大切なことが何かが分かります。
不登校の体験はとてもつらいものです。自分のことであれば、自分で考えて処理すれば良いのですが、子供のこととなるとそう簡単にはいきません。もどかしい思いをすることもあるかと思いますが、不登校の改善に「これをしたらうまくいく!」といったものはなく、傷付きながらも試行錯誤を繰り返して、親子で一緒に見つけていくしかないと思います……。
私たちは知らず知らずのうちに、親や学校から「学校に行かなくては、いい成績でなければ、いい会社で働かなければ幸せになれない」という考え方を教えられます。しかし、本当にそうでしょうか? 幸せの形は人それぞれのはずですし、自分で見つけていくもののはずです。だから、「不登校だから、子供は楽しんではいけない」「子供が不登校だから、親は幸せになってはいけない」などと思わないでほしいです。不登校でも、楽しんでいいし、幸せになっていい。その考え方を自分に許してあげつつ、親は子供のこれからを見守っていけるといいのかなと思います。
ーー作品について、どのような意見が寄せられていますか?
子供の不登校で悩む方から共感の意見をいただいたり、学校関係者の方から「参考になる」とおっしゃっていただいたりしました。少しでも、悩める皆さんのお役に立てていたら幸いです。
ーー今回のマンガを描いたきっかけを教えて下さい。
不登校のことについてSNSで発信するなかで、子供の不登校に悩む親子がたくさんいることを知りました。また、不登校で苦しみ、自死してしまう子もいるという事実を知り、とてもショックでした。私自身も幼少期に信頼できる大人がおらず、生きる希望を持てない時期がありました。子供は、周りの大人が信じられなくなったときに絶望し、自分を傷つける方向に向かってしまいがちです。でも、そんなことは子供自身も、子供を大切に思う親も望んでいないはずです。
だから、学校に行くことが「つらい」と感じている子供に無理をいうのではなく、まずは子供の話を、本音を聞いてあげてほしいです。気持ちを話す気力がなさそうだと感じたなら、落ち着くまでゆっくり休ませてあげてほしいです。最悪の事態になる前に。そんな思いを込めて、このマンガを描きました。
また、私のnoteでは、Instagramに投稿していないカットを含めた「完全版」を公開しています。Instagramでは伝えきれなかった私の葛藤や不登校に対する思いなどを表現していますので、そちらもぜひご覧下さい。
(マグミクス編集部)