ハードル爆上がりの「ゴジラ」映画 次回作は「ホラー」「青春」がキーワードになるのか?
庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』、山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』。すっかり観客のハードルが上がりまくったなかで、果たして次回作はどのようなアプローチの作品になるのでしょうか。
いよいよ地上波初放送される『ゴジラ-1.0』
2023年最大の話題作『ゴジラ-1.0』が、いよいよ11月1日(金)に「金曜ロードショー」で地上波初放送されます。ゴジラ70周年を記念して制作された本作は、70億円を超える大ヒット、アメリカでも邦画実写作品として歴代1位となる興行収入を記録し、アカデミー賞の視覚効果賞を受賞しました。
山崎貴監督のインタビューによれば、「『ゴジラ-1.0』は『シン・ゴジラ』のカウンターとして作った」という趣旨の発言をしています。『シン・ゴジラ』は、キャラクターを政府関係者にしぼり込み、家族ドラマや恋愛ドラマ的要素をいっさい排除して、とにかく登場人物が早口でしゃべりまくるディスカッション・ドラマとして構築されていました。
一方の『ゴジラ-1.0』は、舞台を太平洋戦争直後に設定し、市井の人びとの友情や恋愛も織り込んだ、ヒューマン・ドラマとしての側面が強い作品になっています。時代設定から恋愛要素に至るまで、両作は正反対ともいえる方向性で作られているのです。
そうなると、次回作はどのようなアプローチで作られるのか、非常に気になるところです。その戦略はある程度時間をかけて、吟味に吟味を重ねて練られることでしょう。「ゴジラ」シリーズは、複数の企業が出資する製作委員会方式を採用せず、東宝一社が全額出資する仕組みをとっています。
同社にはIP戦略を一手に引き受ける「ゴジラ戦略会議」が存在しますし、2023年にはさらなる海外事業展開を見据えてTOHO Globalが設立されています。国内のみならず、北米配給を視野に入れた作品作りになることは、容易に予想できるでしょう。
そう考えると、怪獣同士が戦うバトルものに舵を切ることは難しいかもしれません。すでにハリウッドでは、『GODZILLA ゴジラ』、『キングコング:髑髏島の巨神』、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』など、さまざまな怪獣が入り乱れる「モンスター・ヴァース」が制作されているからです。差別化を図るためにも、東宝はメイド・イン・ジャパンとしてのゴジラにこだわるものと思われます。
バトルものには振らず、映画監督の作家性を重視しつつ、続きものではない単独作品として作り上げること……まさに「言うは易く行うは難し」です。庵野秀明監督、山崎貴監督の後を継いで、新しいゴジラ神話を紡ぐことができるフィルムメーカーは、国内を見渡しても決して多くはないでしょうし、『ゴジラ-1.0』、『シン・ゴジラ』と、観客のハードルが上がりまくったなかで新作を作るプレッシャーは、想像を絶するものでしょう。