『ガンダム00』真面目な顔して「俺がガンダムだ!」←笑わせに来てるの? TV版を総括
TVアニメ『機動戦士ガンダム00』は、現実の世界の延長上にある24世紀を舞台に、平和の意味や対話の大切さを訴える作品……なのですが、真面目な顔でどうにも笑わせにきている節があります。何がしたかったのかを振り返りましょう。
「世界の敵」になることで世界をひとつにしようとした「ガンダム」
これまで数々の「ガンダム」シリーズ作品が作られてきたなか、TVアニメ『機動戦士ガンダム00』は、TV放送終了から15年が経過した今なお大きな存在感を放っています。
その始まりは『機動戦士ガンダム00 ファーストシーズン』(2007年放送)であり、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』以来2年ぶりのTVシリーズでした。タイトルどおり、分割2シーズン制となった初の「ガンダム」作品です。
舞台は宇宙世紀ではなく「西暦2307年」であり、現実の歴史の延長上にある「戦争のなくならない、地球がひとつになれない」世界です。三大勢力「ユニオン」「人類革新連盟」「AEU」が軍拡競争を繰り広げ、宗教・民族紛争もなくなっていない、絶望的な状況となっています。
そこに現れたのが、謎の私設武装組織「ソレスタルビーイング」(以下、CB)です。戦争根絶を掲げ、超兵器「ガンダム」を用いてすべての戦争行為に介入し、武力で抑止すると宣言しました。そう、初の「武器使用の制限なしにPKO(平和維持活動)を行った」「全世界を敵に回した」ガンダム作品です。『新機動戦記ガンダムW』のガンダムたちは宇宙コロニーを代表していましたが、こちらは利益抜きです。
当初の主役モビルスーツは「ガンダムエクシア」などたったの4機で、味方は母艦の「プトレマイオス」とそのクルーたちだけでした。主人公の「刹那・F・セイエイ」をはじめ4人の「ガンダムマイスター」(パイロット)らが国家規模の大軍に立ち向かう孤独な闘いです。
が、序盤は「無敵のガンダムが有象無象を蹴散らす」無双ゲームのような有様でした。ガンダムはビームサーベルなど超兵器を持ち、何より「太陽炉」を搭載しています。この太陽炉、ガンダムお約束のふしぎ物質(宇宙世紀におけるミノフスキー粒子など)のひとつである「GN粒子」を半永久的に生成できます。
GN粒子は、圧縮すればビームとなり、質量を軽くしたり、大気圏突入時にはバリアになったり、濃度が高ければ電波を妨害できるというもので、つまり「ビーム兵器も撃てるし空も飛べる、敵のレーダーにも捉えられない」など良いことづくめの物質です。もっとも、ストーリー的には「副作用」も大事な要素でした。
ガンダムの圧倒的なスゴさは、刹那らの未熟さを覆い隠している面もあります。そのため太陽炉の秘密を横流しされ、3大勢力もガンダム並みのモビルスーツが製造できるようになれば、あっという間に形勢は逆転します。ファーストシーズンでは4機のガンダムがすべて撃破され、CBも壊滅する幕切れでした。
ところがぎっちょん(劇中で二度も使われたフレーズ)、その結末も「計画通り」でした。CBの方針は量子コンピュータ「ヴェーダ」が定めており、刹那らはその方針に従って動く末端にすぎません。現場での指揮はかなり自由ですが、大きな枠組みでは単なるコマ扱いです。
ガンダムを倒すため、3大国家が「地球連邦政府」にまとまる。それこそがCBを設立した「イオリア・シュヘンベルグ」にとって真の狙い……要するに「泣いた赤鬼」みたいな話だったのです。