『きょうの猫村さん』松重豊さん=猫を、かみしめるように味わう1話レビュー
2020年4月8日(水)に、テレビ東京にてスタートしたドラマ『きょうの猫村さん』。まさかの初実写化ということで、発表時から大いに話題となった本作。その第一話はまさに猫村さんの世界観なのですが……。のんびり和める雰囲気と映像のシュールさとのギャップで、笑みが止まりません。
のんびりシュールな作品世界に、ほんわかと浸ろう
あのマンガ『きょうの猫村さん』が実写ドラマになる! 猫村さんを演じるのは誰? ……そんなわくわくする疑問の答えが、松重豊さんだったとは……。多くの原作ファン、松重豊ファンを驚かせた発表と、メインビジュアルの発表。そこには猫に見えなくもない、白いスウェット(?)とピンクのエプロンに身を包み、猫耳のかぶりものをした松重さんの姿がありました。手先や首もとがあらわになっている絶妙なクオリティに、猫村さんのようなとぼけた表情でただずむ松重さん。
もう、いろいろと理屈抜きに「この松重さん、いや猫村さんが動くドラマを観たい」と思わせます。そんなわくわく感から始まった、第一話。坂本龍一さん作曲、ユザーンさん作詞、そしてなんと松重さん本人が歌った主題歌「猫村さんのうた」とともに、土手沿いをのんびり猫村さんがやってきます。
彼女(この三人称さえ、主演・松重豊さんを思うとシュールに見えてしまう……!)が訪れたのは、原作第一話と同じ、「村田家政婦紹介所」。そこで家政婦をする山田さんと、彼女らをまとめる村田の奥さんが、求人を見てやってきたという猫村さんを出迎えます。
玄関に出てきた山田さんの「あれ、猫じゃない?」や、村田の奥さんの「猫はほかあたったらどうだい?」というセリフ。猫村さん以外の登場人物が出てきて、やっと「そっか、まつし……猫村さんは猫なんだった」と、徐々に松重豊さん=猫という事実が、頭に浸透していきました。
猫に家政婦などできるものか。うん、山田さんや村田の奥さんの言うことはごもっともだ。そんなふたりの言葉を尻目に、猫村さんはエプロンをつけて非常に手際よく家事をこなしていきます。畳のすき間も見逃さない、掃除機さばき。洗濯物を干すのだって朝飯前だし、お茶もとってもおいしい。
ふたりが猫村さんを見直していると、仕事をやり終えた彼女はごろんと座布団の上に横になります。買い物だって得意だし、ねずみを見つけたときはすごいんだから。ドラマ終盤、にやりと笑いながらのどをごろごろ鳴らす猫村さんに、ちゃんと「猫として」愛着を持ち始めるんだから不思議です。
松重豊さんの配役以外にも、面白いキャスティングが見られるこのミニドラマ。どたばたとつづられる猫村さんを、眺めながら水曜深夜を過ごしましょう。
(サトートモロー)