アニメ『銀河鉄道の夜』、タイタニック号に触発された名作が引き寄せた、意外な「人物」とは?
ジョバンニとカムパネルラが宇宙を旅する幻想小説『銀河鉄道の夜』は、さまざまなクリエイターたちによってアレンジされ、現代でも多くの人たちに愛され続けています。1985年に公開された劇場アニメーション『銀河鉄道の夜』は、元YMOの細野晴臣さんが音楽を担当したことでも知られていますが、アニメ版『銀河鉄道の夜』には、意外なエピソードもありました。
宮沢賢治が生み出した不朽のファンタジー

4月15日は、豪華客船「タイタニック号」が沈んだ日です。「絶対に沈まない」と謳われた「タイタニック号」でしたが、処女航海中の1912年4月14日深夜に氷山に激突し、翌15日未明に沈没しました。1513名もの犠牲者を出したといわれています。この歴史的事件を題材にして、レオナルド・ディカプリオ主演映画『タイタニック』(1997年)など、さまざまな作品が生まれています。
詩人・童話作家として有名な宮沢賢治(1896年~1933年)の未完の小説『銀河鉄道の夜』も、「タイタニック号」の悲劇に触発された作品のひとつに挙げられます。賢治が1924年ごろから執筆を始めた『銀河鉄道の夜』は、孤独な少年ジョバンニが同級生のカムパネルラと「銀河鉄道」に乗って、宇宙をめぐるファンタジー小説です。物語後半には、氷山に衝突して沈んだ客船に乗っていた幼い姉妹と家庭教師の青年も同乗することになります。
夜空を走る「銀河鉄道」は、実はあの世へと向かう列車だったと、ジョバンニは知ることになります。幻想的で、せつない物語、それが『銀河鉄道の夜』です。
ますむらひろしワールドをアニメ化
松本零士原作の人気アニメ『銀河鉄道999』は、『銀河鉄道の夜』にオマージュを捧げた作品です。ももいろクローバーZが主演した実写映画『幕が上がる』(2015年)では、ももクロ演じる高校演劇部の部員たちは、舞台『銀河鉄道の夜』の上演に挑むことになります。時代を超え、いろんな形になって愛され続けている『銀河鉄道の夜』ですが、なかでも劇場アニメ『銀河鉄道の夜』(1985年)は原作の幻想的なイメージをうまく映像化していることで高く評価されています。
劇場アニメ『銀河鉄道の夜』は、『アタゴオル物語』など猫のキャラクターで知られる漫画家・ますむらひろし氏が1983年に発表したコミック『銀河鉄道の夜』を原案としたものです。ジョバンニ(CV:田中真弓)とカムパネルラ(CV:坂本千夏)は、ますむら作品でおなじみの猫のキャラクターとなっています。
星祭の夜、猫の姿をしたジョバンニとカムパネルラは「銀河鉄道」に乗って、「本当にいちばんの幸せ」とは何かを求めて旅をすることになります。とてもファンタジックな作品です。「虫プロ」出身、人気アニメ『ルパン三世』のパイロットフィルムにも参加していたベテランアニメーター・杉井ギサブロー監督の代表作となっています。