急に「パパ」が別人になってる? 忘れがたい藤子・F・不二雄先生代表作の「最終話」
藤子・F・不二雄先生は代表作『ドラえもん』のほかにも、数多くの名作を残しています。世代であれば、マンガだけでなく、アニメ版も多くの人が視聴したことでしょう。しかし、時が経ったことで、なかには原作の最終話を忘れている人もいるのではないでしょうか?
最終回だけ「パパ」が違う?
2023年に生誕90周年を迎えた藤子・F・不二雄先生の代表的な作品といえば、国民的アニメとして今も続く『ドラえもん』を思い浮かべる人は多いでしょう。1996年に62歳という若さで他界されたため、連載中だった『ドラえもん』は最終話を迎えることなく未完となっています。
そのほか、完結した作品でも、『パーマン』や『キテレツ大百科』といった誰もが名前は知っている名作が多々あります。アニメの方は視聴していても、意外と原作の最終話を知らない人は多いかもしれません。
たとえば1977年から1983年まで中高生向けコミック誌「マンガくん」、その後継誌「少年ビッグコミック」に連載された『エスパー魔美』の最終話は衝撃的でした。
同作は、中学生の「佐倉魔美」が超能力に目覚め、秀才のクラスメイト「高畑」とともに、人助けや難事件の解決に人知れず大活躍を始めるというあらすじで、基本的に1話完結で物語が展開されます。
最終話の「パパの絵、最高!!」では、画家で父親の「十朗」と、かつて通っていた美大の同級生「水上」を巡るストーリーが描かれ、最終話とは思えないほどあっさりとしたラストを迎えました。
すでに有名画伯になっていた水上は、十朗の個展にやってきたことがきっかけで、受付をしていた魔美にヌードモデルになるよう頼みます。そして、魔美は水上が美術商の「伊笠金次郎(通称:イカ金)」に弱みを握られてお金を無心されていることを知り、エスパーの能力によってイカ金を成敗するのです。
イカ金の呪縛から解き放たれた水上は魔美のデッサンを描き終え、最後に魔美と握手しました。そして、魔美がテレパシーで「十朗(父)の絵にはおよばない」という水上の本音を知り、空を飛びながら「パパの絵、最高」と喜ぶところで本作は幕を閉じます。
父に対する愛の深さが感じられる良い話ではあるものの、まだまだ続きがありそうなストーリーでした。アニメ版では最終話の119話ではなく、82話で「パパの絵、最高!!」が放送されています。アニメ最終話「動き出した時間」では、パパがフランスに絵の留学に行ってしまうという、オリジナルの最終回らしいストーリーが描かれました。一説によると、藤子先生は『エスパー魔美』をまた描きたいと言っていたそうなので、病に倒れなければ、真のエンディングが読めたかもしれません。
ほかには1970年代に「こどもの光」で連載されていた『キテレツ大百科』も、あっさりした最終話でした。発明好きの「キテレツ」こと「英一」が、ご先祖さまの「キテレツ斎」が書き残した秘伝の書「奇天烈大百科」を解読して助手「コロ助」を作り、ユニークな発明品を次々と生み出していくという物語です。
最終話の「さらば大百科」では、その奇天烈大百科をママが誤って捨ててしまい、キテレツとコロ助が大百科を追い求めて奔走する姿が描かれました。キテレツは自力で発明品を作り上げ、大百科を探したものの、最終的には燃やされてしまいます。しかし、キテレツは大百科のことを諦め、キテレツ斎に頼らずに自分の力で立派な発明をすることを決意して完結となるのでした。
ちなみに、この最終話に登場するキテレツのパパは、これまでのメガネをかけている外見と違い、『ドラえもん』の「のび太のパパ」と同じ見た目をしています。加筆、修正された単行本でも直っておらず、ファンの間では「なぜこのままで出した?」と長い間、疑問視されているようです。