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手塚治虫が『空気の底』で描いた、人間の愚かさ。復刻版に見る手塚短編の真髄とは

手塚治虫作品のオリジナル復刻を手がけている立東舎から、手塚治虫の短編集『空気の底 オリジナル版』が発売されました。さまざまな題材や視点で描かれた1話完結の物語には、手塚治虫の天才的な創造力が凝縮されていました。

雑誌掲載時の内容で復刻、重要だった「タイトルページ」も

『空気の底』オリジナル版(立東舎)表紙
『空気の底』オリジナル版(立東舎)表紙

 マンガの神様・手塚治虫の短編集『空気の底』が、雑誌掲載時のオリジナル状態で復刻され、2020年2月に立東舎から発売されています。同作は1968~70年に「プレイコミック」誌に掲載されたもので、SFやサスペンス、ホラーなど、題材や設定も多彩ですが、多くのエピソードで人間の過酷な運命、そして彼らの業の深さ、救いのなさが描かれています。

 いま同作で注目すべき点、そして復刻されたオリジナル版ならではの見どころについて、かつて虫プロ商事に在籍し、手塚治虫の仕事ぶりをよく知る飯田耕一郎さん(漫画家・漫画評論家)に聞きました。

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ーー『空気の底』はこれまで「手塚治虫文庫全集」(講談社)などで読むことができましたが、今回復刻されたオリジナル版『空気の底』と従来の単行本で、大きな違いはあるのでしょうか?

飯田耕一郎(以下敬称略) 雑誌掲載時にあった多くの扉ページが、きちんと収録されている点が、大きなところといえます。『空気の底』収録作品の多くは1話あたり16ページで描かれています。それらのほとんどが、独立したタイトルページを持っていましたが、単行本化の際に削られていました。

 マンガは本来、読者が見開きで読んで、めくった時の効果などを考えて流れを作っていくので、タイトルページを取ってページを繰り上げると、作者が苦心して作った流れが崩れてしまいます。特に、短編作品は最後のページに描かれるオチが肝心です。同作に収録の「野郎と断崖」や「グランドメサの決闘」などは、最終ページにどんでん返しがあるのに、従来の単行本ではラストシーンが見開きで見えてしまっているので、台無しなんです。

 今回のオリジナル版ではタイトルページも含めて雑誌掲載当時の正しい形で復刻されているので、作者の意図した流れを体感できるでしょう。

 また、第1話「ジョーを訪ねた男」では、冒頭の導入部でコマのなかにタイトルが描き込まれていました。これも全集版ではコマを切り貼りして消されてしまった部分ですので、復刻版で見られるのはマンガ好きとして嬉しい部分です。

【画像】迫力満点! 手塚治虫『空気の底』で復活したタイトルページ (8枚)

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