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今夜の金ロー『美女と野獣』 ディズニー映画に見る「結婚観」の遍歴

かっこいい王子さまが、いつか迎えに現れる。ディズニー映画が描いてきた、そんな恋愛観・結婚観に新しい流れをもたらしたのが、1991年に劇場公開された長編アニメ『美女と野獣』でした。行動派のヒロイン・ベルが結婚相手に求めるのは、ルックスでしょうか、それとも経済力でしょうか。ディズニー作品が変化したことを印象づけた『美女と野獣』の魅力に迫ります。

ディズニーを代表するミュージカル作品

『美女と野獣』 (C)Disney Enterprises,Inc.
『美女と野獣』 (C)Disney Enterprises,Inc.

「コロナ離婚」という言葉が注目を集めています。新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が増え、自宅で夫婦が顔を付き合わせる時間が長くなったことから、それまであまり気にならなかった性格や生活習慣の違いに不満を覚え、夫婦間の危機が訪れているようです。

 この人のどこが好きで、結婚したんだっけ? そんな夫婦間によぎる疑問に対し、出逢ったばかりのころのドキドキ感を思い出させてくれるのが、ディズニーの長編アニメ『美女と野獣』(1991年)です。2020年4月24日(金)21時からの「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)にて、全国放映されます。

 ファンタジーアニメ『美女と野獣』は、18世紀のフランスで出版された童話をもとにしたミュージカル作品です。有名なテーマ曲「ビューティー・アンド・ザ・ビースト」のほかにも、「ひとりぼっちの晩餐会」などの名曲が散りばめられ、米国アカデミー賞の作曲賞と歌曲賞を受賞しています。ろうそくの姿をした給仕長ルミエールやティーポット姿のポット夫人らが歌い踊る姿が人気を呼び、1994年からは舞台版が上演されるようになりました。エマ・ワトソンが主演した実写映画『美女と野獣』(2017年)が大ヒットしたのも、記憶に新しいところです。

ディズニープリンセスのイメージを更新

 街いちばんの美女で、読書好きなベル(CV:伊藤恵里)は、野獣(CV:山寺宏一)を怒らせた父親の身代わりとして、野獣が暮らす森の中のお城で囚われの身となります。人間が人間ならざるものと一緒に暮らす、「異類婚姻譚」と呼ばれる物語です。見た目は恐ろしい野獣ですが、ともに過ごすうちに野獣には優しい一面があることにベルは気付きます。野獣のすぐキレる性格や食事の仕方にベルは戸惑いますが、ふたりはお互いに少しずつ距離を縮めていくのでした。

 ディズニーアニメのヒロインといえば、『白雪姫』(1937年)、『シンデレラ』(1950年)、『眠れる森の美女』(1959年)といった美しく、貞淑な女性のイメージが長年にわたって定着していました。素敵な王子さまが、いつか私を迎えに来てくれる……。そんなディズニープリンセスの幸福観は、1980年代以降になると女性の社会進出が盛んになり、古臭いものとして批判されるようになります。そこで登場したのが、自分の意思で行動し、愛の力で野獣に掛けられた呪いを解いてみせる、新しいヒロイン・ベルだったのです。

 かつてのディズニープリンセスたちのイメージを現代的にアップデートさせたベルですが、それでも乱暴な男(=野獣)に尽くす健気な女性というキャラクター設定に不満を持つ声もあったようです。行動的なベルをさらに進化させた形で、王子さまとの結婚が幸せとは限らない『アナと雪の女王』(2013年)が誕生することになります。

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