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今夜の金ロー『美女と野獣』 ディズニー映画に見る「結婚観」の遍歴

結婚相手に求めるものは?

結婚相手に何を求めるかは永遠の課題…(画像:写真AC)
結婚相手に何を求めるかは永遠の課題…(画像:写真AC)

 長きにわたって、『美女と野獣』が愛され続けているのは、やはりテーマの切実さがあるのではないでしょうか。『美女と野獣』のテーマ、それは結婚相手に何を求めるかという、人類にとって永遠の課題です。

 ベルは同じ街で暮らすマッチョでイケメンのガストン(CV:松本宰二)からも求婚されていましたが、ガストンの軽薄で、自己チューな性格をベルはどうしても好きにはなれません。一方の野獣は自分の容姿に強いコンプレックスを抱いていますが、大きなお城で暮らしています。ルックスはいいけど、性格に問題のあるガストン。ルックスには難があるけど、経済力はある野獣。今なら、どちらとも結婚しないという選択肢もあるわけですが、結婚することが当然と考えられていた時代の女性・ベルとしては、悩ましい問題だったのではないでしょうか。

 結婚相手を選ぶ基準は、人それぞれだと思います。でも、結婚や恋愛に躊躇している人に、もう一本観てほしい映画があります。ハリウッドの人気俳優ジャック・ブラックとグイネス・パルトローが共演した恋愛映画『愛しのローズマリー』(2001年)です。

 女性を外見だけで判断していた主人公のハル(ジャック・ブラック)が、たまたま出会った心理カウンセラーから催眠術を掛けられ、人間の心の美しさが見えるようになるというコメディ作品です。ハルは街で見かけた絶世の美女・ローズマリー(グイネス・パルトロー)に積極的にアタックし、交際を始めます。実際の彼女は、肥満体型です。でも、ローズマリーの心の美しさを知ったハルは、催眠術が解けても彼女と別れることができなくなってしまいます。

約束(タブー)を守ることができるか

 もしかすると、野獣に掛けられていた呪いとは、「自分は誰からも愛されない醜い姿をしている」という強力な自己暗示だったのかもしれません。野獣はベルのことを深く愛し、またベルからも愛されることで、自分に掛けられていた呪いを解くことができます。愛の力が、コンプレックスの塊だった野獣に自信を与えたのです。

 ディズニーアニメでは、他にも『リトル・マーメイド』(1989年)や『プリンセスと魔法のキス』(2009年)など、「異類婚姻譚」をモチーフにした作品があります。人間と人間ならざるものが結婚するおとぎ話は、それこそ世界各地に残されています。日本では「鶴女房」や「雪女」などが有名ですが、「猫女房」「はまぐり女房」「ゴリラ女房」などユニークな逸話も言い伝えられています。毎日、おいしいミソ汁を作ってくれる「はまぐり女房」は、とても素敵だと思います。

 各地に残された「異類婚姻譚」に触れると、一緒に暮らし始めたきっかけは実にさまざまなことが分かります。また、相手から求められた約束(タブー)を守れるかどうかが、結婚生活を続けていく上での大きなポイントのようです。『美女と野獣』をはじめとする「異類婚姻譚」には、自分とは異なる価値観を持った異性と暮らすドキドキ感がリアルに描かれているといえそうです。

(長野辰次)

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