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90歳で現役!少女漫画家わたなべまさこ 改めて読みたい名作と新連載への期待

天使のような殺人鬼『聖ロザリンド』

 1973年、『ガラスの城』の次に連載された作品が、『聖ロザリンド』です。そのあまりの刺激的な内容に、『週刊マーガレット』では連載が実現せず……しかし、次は何がなんでも『聖ロザリンド』を描きたい! と決めていたわたなべ先生は、雑誌ごとに漫画家が固定していた時代には珍しく、講談社の『別冊フレンド』にて連載を開始。果たして『聖ロザリンド』は大ヒットし、集英社側がとても悔しがった……という逸話もあるそうです。

 主人公は、金色の髪に青い瞳、バラ色の頬を持つ8歳の女の子。両親にもたいへん可愛がられている純真なロザリンドに、会う人みんなが夢中に。

 そんなロザリンドは、きれいな物が大好き。ある日メリイ伯母さんが大切にしている金の置時計を無邪気に欲しがったロザリンドに、伯母さんはある約束をします。

「私が死んだら金の置時計はロザリンドにおわたしください」

 この約束から、ロザリンドは史上最悪の殺人鬼となっていく……。後にも先にも、こんなにも無垢な殺人鬼がいたでしょうか。

 ロザリンドは嘘をつくことはいけないこととし、嘘をついた人には残虐な制裁を行い、自分も殺人を犯したことを周囲に隠してはいないのです。しかし、その見た目と人に対する優しさから誰も信じず、ロザリンドの殺めた数の多さといったら……。

 殺人を悪いことと思えないロザリンドの琴線に触れることは何なのか、また8歳の少女だからでもあり、8歳なのに? でもある殺人方法。今なお鮮度の落ちていない衝撃を、確かめてみてください。

生まれついての悪女『秘密ーひめごとー』

 そして、今回新たに始まった『秘密ーひめごとー』。舞台は東京・白金台のマンションから始まります。幸せな結婚をし、裕福な生活をしている美也。夫に愛され、どんなものでも手に入る何不自由ない生活を送っていた。しかし、中学の時の同級生・糸子と再会したことがきっかけですべてが崩壊していく……。

 少しは自分の幸せを鼻にかけたいところもあるが純粋な美也と、幸せクラッシャーの糸子の対比に、背筋が凍ります。

 美しい線に、色気漂うキャラクター、オシャレな台詞。これから起きる展開に恐怖を感じながらも、読み進めてしまうわたなべ先生の魅力満載の作品。先生は、1話のあとがきで次のように語っています。

「この作品を作るにあたって、生まれついての悪女を描いてみたかった。人の倖せを見ると、破壊せずにはいられない哀しい性の女。でも描きすすめる内に…」

 この後の内容も、みんなで楽しみに待ちましょう! デビューから68年。常に新作を生み出し続けるわたなべ先生に心から感謝します。

 現在、コロナウイルスの影響により、アナログにて作業されていた先生方は、アシスタントさんたちを仕事場に呼べず、苦労なさっているようです。私がアシスタントをさせてもらっている漫画家さんのところでも、仕事は全てiPadを介したリモートワーク。雑誌も休刊になる月が出てきたり、本屋さんも閉まっていたりと、作品を作り上げてくださる方はもちろん、マンガを楽しみに待つ側も少し不安な日々。

 しかし、マンガの凄さは、今まで出版されてきた膨大な冊数にもあります。家にあるマンガを読み返すのも、今では主流となった電子書籍を読むのも、家の中で過ごすにはピッタリな楽しみ方です。

 マンガの世界は無限です。マンガから力をもらいながら、今の状況を乗り越え、新しく触れ合える世界を手にすることができますように。

(別冊なかむらりょうこ)

【画像】ファッションの描き分けも絶妙! わたなべまさこ先生の少女イラスト(4枚)

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