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『FF3』30周年! 地獄のラストダンジョン、セーブポイントはどこに?

天才プログラマー、ナーシャ・ジベリ氏の存在

ワンダースワンカラー クリスタルブラック(BANDAI)
ワンダースワンカラー クリスタルブラック(BANDAI)

 どうにかこうにかラスボスの「くらやみのくも」を倒してエンディングを迎えてからちょうど10年ほど経ったころ、バンダイの携帯ゲーム機「ワンダースワンカラー」に「FF」シリーズの1から4が移植されるとアナウンスがありました。

 当時は「なんでゲームボーイじゃなくてワンダースワンなんだろう?」と首をひねったものですが、今ならスクウェアが立ち上げた流通会社「デジキューブ」の存在が任天堂との関係を悪化させていたからだと思われます。

 この移植版、1、2、4は無事に発売されたのですが、なぜか3だけは雑誌にも記事や写真が出ていたにも関わらず、発売されませんでした。その後しばらくしてから関係の修復に成功した任天堂からも「ゲームボーイアドバンス」でのリメイクが発表されましたがこちらも立ち消えとなり、2006年になってようやく「ニンテンドーDS」で発売されたのです。

 度重なるリメイクの立ち消え、この大きな原因となったのが、天才プログラマーとして知られるナーシャ・ジベリ氏によるハードの限界を超えたプログラミングでした。

「FF」シリーズでは1から3まで開発に参加していたナーシャ・ジベリは、『FF1』の頃、飛空艇に影を付けたいという要望に対し、一晩で影を付けただけではなく、速度を4倍にするという離れ業をやってのけ、周囲を大いに驚かせたそうです。また『FF3』の開発の際にも重大なバグが発生したため、スタッフがアメリカにいたジベリ氏に電話で相談したところ、そのままコードの修正箇所を指示するという超人的な能力を発揮しています。ディレクターの坂口氏によれば、似たようなことはしばしばあったそうで、おそらくすべてのコードを暗記していたのではないかと言われています。

 時にジベリ氏はハードウェアのバグを利用したプログラミングを行なっていたため、それらの挙動を再現できるようにするためには、高性能なハードウェアが登場するのを待つしかなかったというのが、『FF3』のリメイクが遅れた原因のようです。ジベリ氏に追いつくまでに、ハードの進化は16年の時を必要としました。この事実こそが、『FF3』がどれほどの才能をつぎ込んで作られた傑作なのかを示しているように思えます。

(早川清一朗)

【画像】時代が追いつけなかった、天才プログラマーが手掛けた『FF3』(5枚)

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