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再放送決定の「ザ・ベストテン」 忘れられない杏里と「CAT’S EYE」の思い出

アニソンの世界に新風を吹き込んだ「CAT'S EYE」

アニメ・ミュージック・カプセル「キャッツ・アイ」(SOLID)。杏里さんの歌う「CAT'S EYE」を収録
アニメ・ミュージック・カプセル「キャッツ・アイ」(SOLID)。杏里さんの歌う「CAT'S EYE」を収録

 今でこそアニソンは一般化し、しばしば特集番組が作られるほどの人気ですが、1980年代は一般の歌謡曲よりも数段下の扱いを受けていました。例外はゴダイゴの「銀河鉄道999」やH2Oの「みゆき」「思い出がいっぱい」くらいだったでしょうか。レコード会社によってはアニメソングを非課税の『童謡扱い』としているところもあったのです。

 そんな状況だったので、杏里が「ザ・ベストテン」に登場するというのは子供心にもかなりの驚きでした。杏里がどういう人なのかも見たいし、レコードを買わなければ聞けないフルバージョンも流れるかもしれない。夜が楽しみで楽しみでたまりませんでした。

 そうして迎えた夜の9時、ついに「ザ・ベストテン」が始まりました。いつものように登場する久米宏氏と黒柳徹子さんの軽妙なトークを聞きながら、今か今かと杏里の出番を待ち構えます。

 パタパタパタ……とめくれていくランキングボードを眺め、今週は他に誰が出るんだろう、次こそは杏里かな? と、流れる歌謡曲を楽しみながら、眠気が来ないように祈りつつ、そのときを待ちました。

 やがて登場した杏里は、ものすごく奇麗なお姉さんでした。久米さんと黒柳さんとのやり取りの後、ステージに上がって堂々と「CAT’S EYE」を歌い上げてくれました。

 後で知ったことですが、杏里はアニソンをあてがわれたことにショックを受けていたそうで、レコーディング直前にスタジオを飛び出しドタキャンしようとしたのだそうです。当時のアニソンの地位を考えれば、無理もありません。それでも最終的にはしっかりと責任を果たして歌い上げてくださったのは、プロとしての矜持なのでしょう。

 また、調べてみたところ、杏里が「ザ・ベストテン」に初登場したのは1983年の9月15日であることもわかりました。最初は7位で、その後徐々に順位を上げていきますが、中森明菜の「禁区」の壁を破れず6週連続2位に甘んじます。しかし11月10日、「ザ・ベストテン」300回記念放送の際に、ついに1位に輝いたのです。杏里や関係者、そして「CAT’S EYE」を後押ししたファンの感慨も、ひとしおだったのではないかと思います。

 その後も多くのヒット曲を世に伝え続けてきた「ザ・ベストテン」ですが、時代の波に押され、1989年に終了してしまいました。最高視聴率は41.9%。記録にも記憶にも残る、時代を代表する番組でした。

(早川清一朗)

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