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ソーシャルディスタンスの時代 アニメ『のんのんびより』を見たい「4つ」の理由

つながりの温かさを思い出させてくれる作品

『劇場版 のんのんびより ばけーしょん』 (C)2018 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合劇場
『劇場版 のんのんびより ばけーしょん』 (C)2018 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合劇場

(3)人と人とのつながりの温かさを思い出させてくれる。

 テレビシリーズ第1期のエンディングテーマ曲は『のんのん日和』。歌詞のなかに、「空と地面は遠く 人と人は近く」というフレーズがあります。これこそがまさに、本作のテーマでもあるのかもしれません。いつだって人は、つながり寄り添いながら生きるもの。ソーシャルディスタンスや外出自粛で物理的に離れていたとしても、温かな心の結びつきは何ら変わるものではないし、変える必要もないのです。都会で暮らしている「ひか姉」こと宮内ひかげ(CV:福圓美里)も、たまの休みに田舎に帰ってきては、みんなに都会自慢をするのがうれしそう。『劇場版 のんのんびより ばけーしょん』で、夏海たちが旅先の沖縄で出会った新里あおい(CV:下地紫野)は、一緒に笑って夜の浜辺で星砂を探した時間のことを、いつまでも忘れることはないはずです。れんげも、ひと夏だけのお友達・ほのかちんこと石川ほのか(CV:高垣彩陽)と、今でも文通を続けているのではないでしょうか。

 普段から近くにいる人とのつながりだって素晴らしいと、この作品が思わせてくれるはずです。テレビシリーズ第1期の名エピソード「姉ちゃんと家出した」の、越谷姉妹と兄・卓の絆は、ささくれ立って冷たくなった心も、じんわりと温かくしてくれます。

(4)何にもない時間こそ素敵なのだと感じさせてくれる。

 アニメ『のんのんびより』で最も特徴的なのは、普通の作品ではありえないような、景色を映した長回しのカットや、たっぷりと取った「間」でしょう。里山の美しい自然を見せるという以上に、何でもないささやかな時間こそ素敵なのだという、メッセージがこめられているような気がしてなりません。せっかくの長期休暇を、何にもないまま自宅で過ごさなければならないのは、確かに残念なことです。けれど、何にもない時間は、本当はとても貴重なのかもしれません。とめどなくあふれてくる情報に溺れながら、追い立てられるように忙しくしていた毎日であれば、眺める空の青さや雲の形の繊細さに気付くことがあったでしょうか。日に日に深くなっていく山の緑に、初夏の訪れを想うことがあったでしょうか。

 特にやることのないゴールデンウィークは、もしかすると、それほど悪くないのかもしれない。アニメ『のんのんびより』を視聴した後であれば、そんなふうに思えるかもしれませんよ?

(取材/構成:香椎 葉平)

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