巨匠たちが少女漫画から飛び出した!『薔薇はシュラバで生まれる』が描く仕事場の青春
少女マンガ界のレジェンドたちのアシスタントをつとめた漫画家による『薔薇はシュラバで生まれる─70年代少女漫画アシスタント奮闘記─』が注目を集めています。名作が生み出された現場の様子や、作家たちの人となりが生き生きと描かれています。
生き生きと蘇る、漫画家たちの仕事場風景

少女マンガの著名作家たちの仕事ぶりはどのようなものだったのか……? そんな疑問に答えるように、元アシスタントの視点で仕事場でのエピソードを綴った書籍が話題になっています。少女マンガに詳しい芸人の別冊なかむらりょうこさんが解説します。
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STAY HOME…。皆さま、この時期をいかがお過ごしでしょうか。普段はアウトドア派の方も、家の本棚にあるマンガ、はたまた電子書籍へと手が伸びているのではないでしょうか。マンガの素晴らしい画力や構成力、魅力的な物語の数々を見ていると、とても気分が晴れやかになってきますよね(ウットリ)。
マンガを読み終わり、ふと気になっているのが、「これを描いた先生ってどんな方なんだろう? そもそもどうやって描いているんだろう?」………そんな興味がわいているあなたにピッタリなマンガが発売されています。
アシスタントが見た名作誕生の瞬間! これは受け継がれるべき歴史的資料! 2020年2月にイースト・プレスより発売された、笹生那実先生による『薔薇はシュラバで生まれる【70年代少女漫画アシスタント奮闘記】』です!
笹生先生は1973年、高校生のときに少女漫画家デビューし、当時のペンネームは笹尾なおこ。その後、数多くの少女漫画家アシスタントを経験し、1987年ごろまで自身の作品を発表し、32歳で商業漫画家を引退されました。
笹生先生がアシスタントをされていた1970年代は、SNSもなければマンガを教える大学や専門学校も皆無の時代。そのため、デビューした新人漫画家がアシスタントを兼任していることが多かったようです。
数多くの漫画家さんが作中に登場しますが、その年齢の若さといったら…! 美内すずえ先生は20歳、くらもちふさこ先生は高校2年生で登場します。そんなエネルギッシュな少女漫画家たちが、ときにはカンヅメ旅館に閉じこもり、おびただしい熱量で原稿を仕上げていく……。
「まんが家は三日徹夜 座りきり一ヶ月 一日半の絶食ぐらい覚悟しなければ」(美内すずえ)
美しい誌面には決して出てこない、漫画家の生みの苦労と、ホッとする談笑風景、笹生先生だからこその視点で見てきた漫画家さんたちの仕事場が、ここに蘇っているのです!
数々の名作に隠れた、驚きの舞台裏エピソードたち

1970年初め頃から1980年頃までの少女マンガ黄金期。今もなおその時代に描かれたマンガは、名作として読み継がれています。『薔薇はシュラバで生まれる』には、そうした作品を描いた先生たちが数多く登場します。
その豪華さといったら……美内すずえ、くらもちふさこ、樹村みのり、三原順、山岸涼子、木原としえ、牧村さとる……レジェンドたちの惜しげもない登場っぷり! そして、次々と語られる、知られざる逸話たち。
美内すずえ先生の壮絶なシュラバと、アシスタントさんたちを盛り上げる話術力。くらもちふさこ先生のあのシリーズ物のバンド名には実はこんな誕生秘話が……。
樹村みのり先生からもらった、創作を超えて人生にとって大切な言葉。そして、山岸涼子先生の口から出た衝撃の発言「この作品描きたくないわ」…! それは、少女マンガ界を揺るがしたあの作品、そしてその発言の真意とは?
若き才能たちと、たゆまぬ努力、その可愛らしいキャラクター像に、改めてファン心がくすぐられるのです。