「猫は液体」説もあるし! 毛の流れを見ていた飼い主、船出をする!?
漫画家の迷子さんによる描き下ろしエッセイ。猫の毛並みを愛で、なでる手が止まらない飼い主が思い立ったのは……流れがあるなら船出だ!
猫の毛並みを見ていたら…船出をしたくなった!?
漫画家の迷子さんによる描き下ろしエッセイ。愛猫の毛の流れを飽きることなく見て、なでる飼い主が思い立ったのは……そう、船出!
猫の毛の流れに乗る船旅の結果は?
* * *
猫の毛の流れは面白い。
猫の毛は鼻の上あたりを中心としてそこから全身に流れているように見える。人で言うところのつむじなのだろうか。毛の流れを見ているだけでもまあ楽しくて仕方がないけれど、触ってみるともっと楽しい。猫っ毛という言葉が表す通り、猫の毛は本当に細くて柔らかいのだ。指通りもさらさらして心地良いし、寒い時期から暑い時期への季節の変わり目にはなでるだけでも毛が抜ける。
これはあれに似ている、川だ。さらさらした毛は水に似ていると言えなくもないし、流れはいつも鼻から尾へと滞りない。猫液体説の信憑性が一層高まってしまう
しかしそうと分かればやることはひとつ、船出だ。猫川を下らなければなるまい。
鼻先から船を出しオールをこいで額を上り、頭上から滑らかに背中へと向かう。腹側に寄りすぎると流れが止まってしまうので注意が必要だ。腹のぱやぱやした毛に巻き込まれ一生を過ごすのも悪くないけれど、目的地は尾の先だ。背骨ラインを注意深く進み、細い尾を進む。そしてついに尾の先へと到達だ。おめでとう、おめでとう、ありがとう、ありがとう。
激しく尾を振られ、はじき飛ばされた自分は船ごと大破したが、今日も猫川の流れは穏やかなのだ。
(迷子)