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アニメ、コロナの影響は製作だけでなく「宣伝」も 困難の先にある未来を予測する【この業界の片隅で】

アニメ業界の片隅で生きる著者・おふとん犬が、業界の片隅で拾った様々な話題を取り上げて解説します。第10回は、アニメの宣伝についての話。新型コロナウイルス感染症の影響で、アニメの宣伝も大きな影響を受けています。どんなことで困っているか、その困難を乗り越えた先に何が待っているか、個人的な経験をもとに予測します。

オタクならではの「利用されたくない」心理

2020年1月には『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が新宿のNewDaysで広告ジャックを行った (C)創通・サンライズ
2020年1月には『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が新宿のNewDaysで広告ジャックを行った (C)創通・サンライズ

 アニメ制作やアニメビジネスの現場における、「ちょっと知りたい話」「さまざまな裏話」を紹介します。今回は、アニメの宣伝についてのお話。業界の片隅で活動する「おふとん犬」さんが解説します。

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 アニメや関連コンテンツの企画書を読んでいると、やたらと目にするのが「イノベーター理論」です。かく言う私も、内心では無理があると分かっている企画をやむなくプレゼンすることになった時、少しでも説得力を持たせるために援用したことがあります。もちろん、理論の詳細までは理解しているわけがありません。

 それでも簡単に説明させてもらうと、1962年に提唱された古典的なマーケティング分析だそうで、革新的な新商品を受け入れるユーザーを5つに分類するというものです。そのうちの16%を占める「イノベーター(革新者)」と「アーリーアダプター(初期採用者)」が重要で、残りの84%は彼らの動きに追随していくのだとか。ものすごく乱暴に言うと、「新しくて尖ったものがオタクの心に刺さらないと、広めようとしても広まらないよね」といったところでしょうか。

 こういう話を聞くと、私のように短絡的で性格の悪い人間は、「じゃあ、影響力の大きいインフルエンサーをイノベーターとして雇えばいいじゃん」などと言い出します。実際、インフルエンサーマーケティングを事業主体としているPR会社はごまんとあります。

 それ自体を否定するつもりはないのですが、私自身は、インフルエンサーマーケティングに積極的にはなれません。ファン心理を考えると、ターゲットに受け入れられなかった場合のリスクが大きすぎるからです。とりわけアニメや声優のオタクは、自らの意志で対象を好きになったという事実そのものに、強い誇りを抱いています。「誰かの商売の手段として好きにならされた」と後から明らかにされるのは、その誇りを傷つけられることに他ならず、「金儲け目当てのやつに利用された」「バカにされた」と感じるものなのです。

 つい最近も、ネットで爆発的に話題を呼んだコンテンツが、実は「広告代理店案件」だったなどと大騒ぎになりました。冷静に考えれば、「広告代理店案件」でないコンテンツの方が少ないと思うのですが、そういうマイナスイメージがいったん広まり始めたが最後、リカバリーする手段を見つけるのが極めて困難になるのがネットの怖さです。

 インフルエンサーを雇うより、誇り高きオタクたち自身にインフルエンサーになってもらう方が、宣伝としてはベターな手段と考えるべきでしょう。その呼び水とする、分かりやすいノウハウもいくつかありました。

 新型コロナウイルス感染症による自粛が始まる前までは。

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