アニメ、コロナの影響は製作だけでなく「宣伝」も 困難の先にある未来を予測する【この業界の片隅で】
それでも「好き」がある限り、未来は再び築かれる

アニメに限らず全てのエンターテイメントが、これからしばらくの間、かつて経験したことのない事態に直面するでしょう。たとえば映画館は、すべての劇場で上映が再開できたとしても、興行収入は最大でも従来の30%~50%程度で推移するはずです。ソーシャルディスタンスを取るために1~2席開けの着席ということになれば、必然的にそうなるからです。
宣伝面に限っても、そもそもお金が掛けられなくなってきます。これまでのノウハウがどこまで通じるのかも、今はまだ、世界中の誰にもはっきりしたことは分かりません。それでも言い切れるのは、アニメをはじめとしたエンターテイメント自体が滅びることは決してないということです。
かつて結核が国民病と呼ばれていた時代、発症しているかどうかに関わらず、実に国民の約50%が感染していたという説があるそうです。そんな時代を経ても、さまざまな文化はさまざまに形を変えて、今に至るまで連綿と続いています。『文豪ストレイドッグス』のファンの方であれば、サナトリウム文学という、結核時代だからこそ花開いたジャンルさえあったことを、ご存知かもしれません。
サナトリウム文学のようなものとは言いませんが、アニメや声優の世界にも、時代の要請を受けて、新しいジャンルが芽生えて育つ可能性さえあります。そのジャンルを開拓するのも、おそらく企業ではなく、心からアニメが好きで、与えられるのでなく自分自身で「好き」を見つけようとするオタクでしょう。たとえどんな時代になっても、愛し続け、推し続け、自分自身でも絵を描いてみようと思う、あるいはステージに立ちたいと願う気持ちがある限り、エンターテイメントがウイルスに屈することはないのです。
予想を外すことに定評のある私が、「これは時代を変える可能性がある」と、いち早く明言して的中させたのが初音ミクです。長くなるので根拠の詳細は述べませんが、初音ミクを最初に見た時、作り手と受け手の区別のなさと広がりが、宣伝の力を凌駕するかもしれないと思ったのです。オタクの「好き」を取り込み続けることで、コンテンツ自らが意志を持つようにしてネットを通して発展していくのであれば、宣伝自体がもはや最小限のものしか必要なくなります。
新型コロナウイルス感染症による危機を乗り越えた後のアニメは、もしかすると、そんなふうになっていくのかもしれません。
(おふとん犬)