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スペシウム光線の映像に驚愕! 円谷特撮の合成技術を支えた「3億円の必殺マシン」とは

昭和の特撮番組を見ていて、急に画面が荒くなった、と思ったら「光るビーム」などが出ませんでしたか? あれは画を重ねているからなんです。

黎明期を支えた「魔法の機械」 コレがなければ怪獣ブームはなかった?

円谷英二氏の主導による合成技術がふんだんに盛り込まれた、「ウルトラQ vol.2」DVD(ハピネット・ピクチャーズ)
円谷英二氏の主導による合成技術がふんだんに盛り込まれた、「ウルトラQ vol.2」DVD(ハピネット・ピクチャーズ)

 1966年放送の特撮ドラマ『ウルトラQ』の「4Kリマスター版」が、2025年2月上旬にNHK BS8Kで放送されました。59年前のフィルム映像が現代の最高画質で蘇り、「巨大怪獣から逃げ惑う小さな人間」という、定番の合成映像などもかなり鮮明でした。

 今では驚きもしない合成映像も、当時の視聴者は「この映像はどうやっているのだろう?」と、驚いたでしょう。実は、特撮の神様「円谷英二」氏が、必要不可欠と言ったのが「オプチカルプリンター」というフィルム編集装置でした。この魔法の機械を駆使できたからこそ特撮はブームを築けたと断言してよいでしょう。

「オプチカルプリンター」とは、現像済みの映写フィルムを別のフィルムに光学的に焼き付けるために用いる機械です。ざっくり説明すると、たとえばスタジオ撮影した怪獣が映るフィルムに、目から出る光線の「線」だけの画を別のポジフィルムに作成して、1コマ1コマを重ね、それを合成して1本のフィルムにまとめる……そんなことが可能な機械です。

●時代は映画からテレビへ
 1959年には、4つの民放TV局がチャンネルをにぎわせ、一般家庭のTV普及率が上がります。早くから「テレビの時代が来る」と確信していた円谷氏は、1963年、62歳で「円谷特技プロダクション(現・円谷プロダクション)」を設立。そして、運命はさらに激変していきます。

 いくつかの特撮専門誌で紹介されている、「オプチカルプリンター」購入にまつわる定説は次のようなものです。

* * *

 1964年、すでにTBSとフジテレビでドラマ企画が進行していたことから、円谷氏は、より高度で効率よく特殊技術を提供するために、アメリカ「オックスベリー社」の最新型『オプチカルプリンター・シリーズ1200』の導入が急務と考えました。実は、同機の旧式タイプは国内にもありましたが、他社の所有物なので自由に使えない不便さがあったようです。

 その最新型はまだ世界に2台しかなく、値段はなんと約4千万円、現在の価格で3億円以上ともされる高額品でした。渡米した円谷氏は、資金も乏しいのにこれを発注します。1号機は当時の東ドイツが購入していて、2号機は米国国防省に納品予定でしたが、オックスベリー社の社長が「世界の円谷なら」と譲ってくれました。

 まず、手付金の500万円は、制作が進行していたフジテレビの特撮ドラマ『WoO(ウー)』から工面しようとしました。ところがドラマは8月に急転直下で頓挫します。機械はすでに船で運搬中なためキャンセルは認められませんでした。円谷氏は大ピンチです。

【画像】「そうだったのか!」 これが「魔法の機械」で合成された、宇宙人の合成シーンです(4枚)

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