【シャーマンキング30周年への情熱(4)】高校時代の筆者が見た、武井宏之氏の驚異的な才能
高校時代に知り合った、武井宏之氏と筆者。のちに『シャーマンキング』を描くことになる武井氏は、当時から驚異的な才能を発揮していました。おそらく初めて語られるであろうエピソードを、武井氏の了承を得たうえでご紹介します。
先生も感心、美術の時間に描いた『聖闘士星矢』

マンガ『シャーマンキング』作者の武井宏之氏と筆者の出会いは、高校時代に遡ります。その時からすでに、彼は驚異的な才能を発揮していました。おそらく初めて語られるであろうエピソードを紹介します。もちろん、執筆にあたり許可をいただいていますよ!(笑)
武井氏と筆者は、青森市にある青森県立青森南高等学校に入学しました。郊外の広大な田んぼの中にポツンと建っており、専用道路が1本だけつながっている場所で、冬に吹雪が吹き荒れると身体の半分だけ真っ白になったり、凍ったりするありさまでした。皆は「南高ブリザード」と呼んでいました。
当時はバンドブームで、同じ人たちが組み合わせを変えて複数のバンドを結成するのが普通でした。筆者はキーボード担当でしたが、男子でピアノを弾ける人間が周囲にあまりおらず、いたるところに顔を出していたものです。実は武井氏もバンドをしていた時期があったことから、組む事はなかったものの仲間同士での親交が生まれていきました。しかし彼は、音楽よりも絵の方で天才的な才能をあふれさせていたのです。
2年生のある時。筆者たちが選択していた美術の授業。そこで武井氏はよく、B4のわら半紙に『聖闘士星矢』の聖衣(クロス)と聖闘士(セイント)を描いていました。彼は『聖闘士星矢』が大好きで、原作はもちろんですが、特に故・荒木伸吾氏がキャラクターデザインをつとめたアニメ版がお気に入りだったようです。
当時、原作コミックでは巻頭カラーになると表紙を見開きページにして、左に聖衣の原形(星座を表す形になっているもの)、右にそれを着用する聖闘士の立ち絵が描かれていました(「聖衣・装着」などで画像検索してみて下さい)。それを武井氏はアニメ版の聖衣と聖闘士に置き換えて描いていました(原作とアニメ版では聖衣の形状も、キャラクターの絵柄も異なります)。
マルチョンでアタリを付けることもなく、いきなり一発書きで(記憶では目・鼻からだったような)、スピードも速く、線にも迷いがなく、まるでアニメの原画のようでした。リクエストされれば……されなくても、次々といろんな聖闘士が描かれていきました。これは堂々と授業をサボっていることになるのですが、先生も文句を言うには上手すぎて、むしろみんなと一緒に感心していました。思い出は美化されるものですが、これについては、そうではないと言い切れます。
当時の武井氏の凄さは、それだけではありませんでした。