自転車漫画『シャカリキ!』のほとばしる熱が、今も多くの人を魅了するワケ
2020年5月20日から6月2日まで、『シャカリキ!』『め組の大吾』『昴』など、曽田正人氏のマンガ作品の電子版が一部無料で読めるキャンペーンが開催されています。なかでも『シャカリキ!』は、まだ自転車競技に注目した漫画がほとんど存在しない時代に「週刊少年チャンピオン」に連載され、作品からほとばしる圧倒的な熱に多くのファンが引き寄せられました。
単なるマンガのキャラクターを超えた主人公
2020年5月20日から6月2日までの間、小学館eコミックストアやKindleなどで『シャカリキ!』1~2巻ほか、『め組の大吾(1~3巻)』『昴(1~3巻)』、『MOON ~昴ソリチュードスタンディング~(1~2巻)』が読める、曽田正人キャンペーンが開催されています。
なかでも、1992年から95年まで「週刊少年チャンピオン」に連載された『シャカリキ!』は、当時自転車競技に注目したマンガがほとんど存在しないなか、作品からほとばしる圧倒的な熱が多くのファンを引き寄せました。
友人から勧められて『シャカリキ!』を読み、結局自分でも全巻揃えるほどにハマった記憶を持つ、ライターの早川清一朗さんが、当時を回想します。
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筆者に『シャカリキ!』の存在を教えてくれたのは、高校時代の友人でした。「お前読んでないの? これは面白い! 絶対にハマる!」と、やけに熱心に勧めてくるので、借りて読んでみたところ、あっさりと作品の放つ熱量の虜(とりこ)となったのです。
もう、第1話からして力強さが半端ではありません。巨大な坂がある”坂の町”に引っ越してきた少年、野々村輝(以下、テル)が、町で2番目に大きい坂「二番坂」を自転車で登りきるだけの話なのですが、テルが周囲の誰からも「無理だ」と言われながら、全身・全霊・全力を尽くして登り切ろうとするシーンは、思わず手に汗握り、エールを送りたくなったのです。筆者の目に映っていたのは単なるマンガのキャラクターではなく、圧倒的な生命力で困難を打開しようとする、ひとりの人間でした。
そしてようやく二番坂を登り切ったと思えば、その2倍の長さがある、町一番の坂「一番坂」が立ちはだかります。
2話で中学生になったテルが一番坂を攻略しようと奮闘する姿は町の名物となり、常に全力を尽くす彼の姿に心をうたれ、力を貸そう、助けようという人たちが集まり始めるのです。
坂ではだれにも負けないと自負していたテルでしたが、町はずれの坂で後にライバルとなる由多比呂彦(以下、ユタ)と出会い、完膚なきまでに叩きのめされてしまいます。ユタが来年、自転車競技の名門である亀ヶ岡高校(以下、亀高)に通うこと、そして亀高のレベルの高さを知ったテルは、おそらく彼にとって最も困難な坂=「高校受験」をも努力と根性で制覇し、亀高での生活をスタートさせるのです。