冒頭で強烈すぎる「オリジナル場面」を入れた実写版 「作品間違えたかと」「子供も観てるのに」
マンガを実写化した作品では、どんな「オリジナルシーン」が入るのかにも注目が集まります。なかには映画の「冒頭」でつかみとして強烈な場面が描かれた作品もありました。
ヤクザ映画かと思ってしまう恐怖の幕開け

これまで数多くの人気マンガが実写映画化され、賛否を呼んでいます。おおむね1時間半から2時間程度の上映時間に原作の物語を入れ込む都合や、または実写にして不自然ではない描写にするために改変が多くなり、原作にないシーンが挟み込まれることもたびたびありました。また、観客にインパクトを与えるためのつかみとして、「冒頭」にオリジナルシーンを入れた映画も多々あります。
なかには見せ場としての魅力もあり、さらに限られた上映時間のなかでの物語の説明に効果的に働いて、高い評価を受けたシーンもありました。
たとえば実写版シリーズ1作目となる2012年の映画『るろうに剣心』(原作:和月伸宏)の冒頭では、幕末に維新勢力側で大勢の敵を殺めた主人公「緋村剣心(演:佐藤健)」が、「人斬り抜刀斎」の名を捨てる前の最後の戦闘である、戊辰戦争の「鳥羽伏見の戦い」での激闘が描かれました。
なかなかの量の血しぶきが舞う場面で、苦手な方は注意が必要ですが、映画では短時間で剣心が過去に恐ろしい人斬りであったことを説明する必要もあり、なおかつ実写シリーズのアクションのクオリティーと本格的な時代劇であることを示す狙いとしても、非常に効果的だったといえます。
このシーンはシリーズ全体の初日に撮影されたとのことで、作り手としても特に気合が入った場面だったことがうかがえます。さらに、剣心の過去を描いた完結編の『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(2021年)が、最後にこの鳥羽伏見の戦いにつながるように終わる「円環構造」も評判となりました。
史実と関連したフィクションでは、2019年公開の『アルキメデスの大戦』(原作:三田紀房)にも、強烈なOPシーンがありました。太平洋戦争終盤に撃沈された「世界最大の戦艦」である「大和」建造を阻止しようとした、数学の天才「櫂直(かい ただし/演:菅田将暉)」の戦いを描いています。
原作マンガの第1話は、櫂に大和建造の見積もりの不備を暴くよう依頼する「山本五十六(演:舘ひろし)」少将の目線でスタートしますが、山崎貴さんが監督した映画版の最初のシーンでは、まず1945年4月7日の戦艦大和の「最期」が迫力のVFXを駆使して再現されました。山崎監督は冒頭の場面について、各種インタビューで、なぜ大和を作ってはいけないのかを示す重要なシーンとしてこだわったことを語っています。
この冒頭では、米軍戦闘機の猛攻で瞬く間に大和側が追い込まれていく姿や、現場兵士の四肢欠損、船体が傾いて甲板からずり落ちていくさまなど、ひたすら陰惨な場面が描かれました。なかでも強烈なのは、敵戦闘機を撃墜するも、パラシュートで脱出した米兵のパイロットはすぐに味方の哨戒機によって救出され、それを見ていた日本兵が呆然とするというシーンでしょう。
この描写は、当時駆逐艦から大和が撃沈されるまでを見ていた方の手記が元となっているそうで、山崎監督が無理にでも入れたいと願った場面とのことです。ここが印象に残っている方のレビューも多く、「あそこだけで、なぜ日本が負けたのかよく分かる」「米国の合理性と、日本の非合理性が際立つ」「人的資源こそ無駄にしてはいけないという姿勢の差にゾッとした」と大きなインパクトを残したようでした。
序盤のオリジナルの凄惨な場面としては、2021年の『東京リベンジャーズ』(原作:和久井健)のOPも強烈です。原作マンガは主人公「花垣武道(演:北村匠海)」が、かつての恋人「橘日向(演:今田美桜)」が死んだニュースを見るところから始まりますが、映画ではその日向の死の原因となった半グレ組織「東京卍會」がいかに恐ろしい集団なのかを、一発で説明するシーンが描かれました。
映画が始まるといきなり車のエンジン音が鳴り響き、全裸でどこかの駐車場内を逃げ惑うヤクザ(演:谷田歩)の姿が映し出されます。そのヤクザを追いかけている車には、東京卍會のトップ「佐野万次郎(マイキー/演:吉沢亮)」と、N0.2である「稀咲鉄太(演:間宮祥太朗)」が乗っており、そのまま相手を轢いてひん死の状態にしてしまいました。そして、稀咲がこの付近の縄張りを東京卍會が仕切ることを宣言すると、車がヤクザを轢くギリギリまでバックで迫ってくる、という恐ろしい幕開けです。
この映画オリジナルシーンに関しては、「『東リベ』実写の最初のシーン、あまりにも怖すぎて別のヤクザ映画見に来たのかと思ってしまった」「シーンの最後に、車内で憂いの表情を浮かべる吉沢亮を横から収めたミドルショットで締める殺伐とした雰囲気に息を呑んだ」「インパクトあっていい冒頭だと思うけど、同じ回に子供がたくさん観に来てたから心配」「ちょっと過激すぎると思う」など、さまざまな意見が出ています。
本作は映倫から「未成年者によるノーヘルでの単車の運転および簡潔な刀剣による殺傷の描写」を理由に、PG12指定(12歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要)となっていましたが、いちばん子供に助言や指導が必要なのはこの冒頭かもしれません。
(マグミクス編集部)