マグミクス | manga * anime * game

ミッキーの吹替声優は30年近く「副業」の人がやってた? 本国キャストと比べたら「納得」も

「やあぼくミッキー」おなじみのあの甲高い声を担当している人は誰なのでしょうか? 調べてみると、そこには多くの謎が残されていました。

日本語版のミッキーマウスは大学教授の「副業」だった?

DVD『みんなだいすき ミッキー!』(ディズニー)
DVD『みんなだいすき ミッキー!』(ディズニー)

「ミッキーマウス」といえば、世界で最も有名なキャラクーと言っても過言ではありません。1928年の誕生から、100年足らずで地球で誰もが知る認知度と人気を獲得しました。

 さて、そんなミッキーに関して、いまだに「謎」とされているのが彼の声です。

「やあ ぼくミッキー ハハ」

 こう書くだけで、頭のなかにあの独特な甲高い声が再現されたかと思います。さて、その声を担当している声優さんの名前を、即答できる人は少ないのではないでしょうか。

 これまで日本版のミッキー役を担当した方は、特別番組を含めると10人以上いるものの、1991年から2018年と、およそ30年近くミッキーマウスを演じてきたのは青柳隆志さんという人物でした。つまり多くの人が知るミッキーの声は、青柳隆志さんの声なのです。

 さて、声優としての青柳さんのキャリアを調べてみると……驚いたことにミッキーマウス以外の役は何もしていません。さらに興味深いことに、青柳さんの本業は声優ではなく「国文学者」でした。漢詩の朗詠、および和歌を専門とし、東京成徳大学で教授を務めています。

 いったい、どうして国文学者の先生がミッキーマウスの声優を? この抜擢こそミッキーマウスをめぐる「最大の謎」といってもいいでしょう。この謎を解明するヒントになるのが、英語オリジナル版のミッキーマウスの声優です。

 1928年に映画『蒸気船ウィリー』で、はじめてミッキーに声が当てられます。そのときの声優は、生みの親であるウォルト・ディズニーさんでした。

 明確なセリフこそありませんが、すでにあの甲高い笑い声をしています。大前提として、ミッキーの声のイメージは原作者によって形作られたものだったのです。

 続いて、1947年から2代目ミッキーマウスを担当したのはジム・マクドナルドさんという人物です。この方ももともと声優ではなく、ディズニー社で音響技師として『白雪姫』『ピノキオ』『ダンボ』と、数々の名作に携わった職人でした。1977年までの30年にわたり、音響技師の仕事と並行して「ミッキー」に声を吹き込んできたのです。

 そして、ジム・マクドナルドさんから3代目を継いだウェイン・オルウィンさんもまた、音響技師でした。現在は4代目のブレット・イワンさんが担当していますが、彼もまた「イラストレーター」という本職を持っています。

 ディズニー・チャンネルのアニメシリーズ『ミッキーマウス!』のミッキーは、コメディアンのクリス・ディアマントポロスさんが演じていますが、オリジナル版のミッキーマウスは基本的に「プロの声優」が担当しているわけではありません。

 どのようにしてミッキーのキャストが選ばれるのか、その選考過程こそ公開されていませんが、長きにわたり日本語版のミッキーの声をプロの声優ではなく、国文学者が担当していたのは、ある意味においてはオリジナル版の精神性を感じさせます。

 副業とはいえ、青柳さんが配給会社WDSHE(ウォルト・ディズニー・スタジオ・ホーム・エンターテイメント)が公式に選んだ専属声優であることに、変わりはありません。なお青柳隆志さんは2代目であり、日本語版のWDSHE公式の初代は声優の納谷六朗さんでした。

 納谷六朗さんといえば、『クレヨンしんちゃん』の「園長先生」役でもお馴染みです。「組長」とミッキーは、同じ声優さんでした。そして、青柳さんは2018年に降板し、現在は声優の星野貴紀さんが3代目ミッキーを担当しています。

 ほかにも調べてみれば、台湾ではトランペット奏者の葉樹涵(イエシュハン)さんがミッキーの声を当てています。思えば青柳さんも、「漢詩文の朗詠」の研究者です。トーキー映画にはじまるミッキーの声優は、「音」に特化したプロフェッショナルに縁があるのかもしれません。

(片野)

【画像】え…っ? 「マジかよ」 こちらが最近「R指定映画の主人公」になったミッキーです

画像ギャラリー