男の子も夢中になった『魔法のスターマジカルエミ』 主人公・舞の「最後の決断」
自分の意思で魔法を捨て去る

『マジカルエミ』のラスト3話では、完結へ向けて、舞をはじめとするキャラクターたちの心情が丁寧に描かれています。
マジシャン最高の栄誉・エミリー賞に挑んだ舞と仲間たち。審査員特別奨励賞に輝き感涙する仲間たちのなか、ただひとり舞だけは、魔法の力を使って獲得した大賞に限りない虚しさを感じてしまいます。
このままでいいのかと迷っていた舞は、希代の天才マジシャン、エミリー・ハウエルの舞台を収めたフィルムをふとしたきっかけで目にします。エミリーも努力で一流となったことを知った舞は練習に励み、下手でも自分の技術で行うほうが面白いことに気づくのです。
トポに魔法を返すことを決意した舞は、家族や仲間たちと共に、ラストステージに臨みます。このラストの展開の密度の濃さは、1980年代アニメの中でも屈指の出来栄えだと筆者は確信しています。
本放送終了後、TV映像を15分にオリジナル映像45分を加え、『魔法のスターマジカルエミ 蝉時雨』というOVAが制作されました。この作品は基本的にBGMが使われておらず、日常の世界が日常の音のなかで過ぎ去って行き、人は成長し、そして過ぎた時間はもう戻らないというテーマを持つ、叙述的な作品に仕上がっています。当時から傑作として名高く、一時はかなり高騰したのですが、DVD BOXに収録されて以降は落ち着いたようです。
そして何より『マジカルエミ』を語るにあたり、忘れてはならないのが舞の声優を務めた小幡洋子(おばた・ようこ)さんです。本作のオープニングテーマ『不思議色ハピネス』で歌手としてデビューされたのですが、とても新人とは思えないレベルの楽曲に仕上がっています。現代でも通じるレベルの名曲です。
『マジカルエミ』の後はロック路線に転向し、1993年に引退。2001年にあるTV番組に城之内早苗さんの同級生として登場した際にはビーズアクセサリーデザイナーとして活動していることが明かされました。現在は何をしているのかは不明ですが、いつか元気な姿を見せてくださることを1ファンとして願っています。
(早川清一朗)