【漫画】男尊女卑の意識「さすが九州」ってホントにある? 父親からの電話にブチギレ!
皆さんは「さす九」という言葉をご存じでしょうか。「さすが九州」を略した言葉で、九州地方の出身で「男尊女卑」の意識が強いひとを揶揄する言葉としてスラング化しています。熊本出身で漫画家のオカン羊さんも育児中に「さす九」を感じることがあったそうです。ある日、実家の父親から電話が掛かってきて……? 作者のオカン羊さんにお話を聞きました。
出身地による価値観や特徴の違いに「驚き」

漫画家のオカン羊さん(@shimizoon)が産後の頃に、実家の父親から電話がかかってきたそうです。孫のことついて話す父親と、いつものように会話をしていました。しかし、子育てについての話題になった瞬間、オカン羊さんは九州男児の父親にひと言物申したくなって……?
オカン羊さんによるエッセイマンガ『我が家のさす九』がX(旧:Twitter)上で公開されました。「さす九」とは、「さすが九州」を略した言葉で、九州地方の出身で「男尊女卑」の意識が強いひとを揶揄(やゆ)する言葉としてスラング化しています。作品のいいね数は1.8万を超えており、読者からは「私も同郷なのですが、昨年まったく同じ経験をしまして、父親が同一人物かと思いました(笑)」「生まれ育った家庭なりコミュニティの特性は、なかなか本人は気付きにくいものですよね」などの声があがっています。
オカン羊さんは漫画家として活動しており、SNSで公開し育児エッセイマンガをまとめた書籍『おやゆび姫と姫丸』(全8巻)がKindleにて公開中です。
作者のオカン羊さんにお話を聞きました。
ーー今回「さす九」のエピソードをマンガにしようと思ったきっかけを教えて下さい。
Xで、九州の男尊女卑を「さす九」と揶揄するのは地域差別ではないか? と話題になっており、それに対して、まるで「地域差別の前に、たしかに女性差別があるから言われるんでしょうが!」と、九州女子たちが自分の経験を投稿していて、まるで#metoo運動のようでした。元熊本女子として、ささやかながら参戦した次第です。
ーーほかに身近で起こったことや、見聞きした「さす九」エピソードがあれば教えて下さい。
友人のことを悪く言いたくはないのですが……おじいちゃんだけでしょ? と思われている方もいるかもしれないので、若者だけの場での印象深い経験があるのでそちらを。20歳になってお酒を飲めるようになって、男女混合の友人らと飲み会に行ったときのこと。
居酒屋ではなく、おしゃれなバーで、バーテンダーさんに直接お酒を注文するスタイルだったのですが、お酒を注文するのが、自然と女性の役目ってことにされちゃうんです。「おい」って言われて(笑)。目上の人でもなく、高校の同級生なんだけど(笑)。私は物覚えがとても悪いので、初耳のカクテル名なのもあって、3人分の伝書鳩をするのがやっとでしたので、「ああ、私は大人の女としてなんて出来損ないなんだ……」と悲しかった思い出があります。
進学で関西に出てきて、関西の飲み会ではそんな男性はひとりもいないから、あのときの伝書鳩は豆鉄砲を喰らった顔をしていたと思います。今では立派な人権を大切にしたい大人に成長できたと思います。

ーー不器用なお父様ですが、逆にオカン羊さんの考えるお父様の「素敵だな」「尊敬する」と思うところを教えて下さい。
全然ないです(笑)。申し訳ないのですが、私たち家族にお金で不自由させないでいてくれたこと……しかなくって……。世の中の男尊女卑は、「男は家族を養っているんだ」を免罪符に、あとは何もしなくていいし、何をしても許されるし、とにかく敬え! というトンデモ価値観で成り立っているので、その理不尽さが建設的じゃなくて嫌いなんだと思います。
戦後の貧しい日本で生き延びるために、(……というのは、自死を選ばず、村八分されず、餓死をせず、に文字通り生き延びるという意味なのですが)今で言うウェルビーイングや個人の人権を後回しにしないといけない時代だったのはあると思うので、慕ってくれる孫との関わり方もわからなくてTVに逃げるしかできない無能なジジイに仕上がってしまった父も、男尊女卑の被害者だと、私は思っています。
だからなくなって欲しいんです。酒と女とギャンブルには手を出さない真面目な人ではあるので、そこは尊敬できるかも? ……尊敬……しているというよりは……もっと「上司」「夫」「父親」という世間から求められる役割であろうと虚勢を張るばかりでなく、自分の楽しみを持って、自分も家族も尊重できたらよかったのにな。そしたら、きっと孫とも遊べたんだろうにな。とは思います。昭和生まれの私たち妻子は普通に殴られてはいました(笑)。
ーーSNSでの反響が多数寄せられています。特に印象に残った読者の声について教えて下さい。
「うちの父(九州男児)が気に障った後の言葉も「馬鹿野郎!」とか「馬鹿もんが!」だわ「この子には同じ呪いをかけさせないぞ! の気持ち」など、共感のコメントが多かったです。
どちらのお父様も、「家のことをいっさいしない」が共通点です。「お父様が『いっぱい食えよ』と言うのは親としての愛情だと思いますよ」というコメントもついているのですが、違うのです。「いっぱい食わせてやっている俺は偉い。気持ちいい」が真意なんです。
買い物も料理も妻にまかせっきりで、例えば熊本名物のスイカを孫に食べさせたいと思っていたけど妻が用意していなかったら怒鳴る。買ってきてくれとも言ってないし、自分で買いに行けばいい話なのに怒鳴る。愛情が自分にしか向いていない悲しい生き物なのです。
幼い頃にそれに気付いてしまった子供が逃げ出してしまう土地として、「さす九」と揶揄されている現状は、とても不名誉だと思います。なかの人が、気づいて変えていくしかありませんよね。後世に伝えるべき文化財だとは思えません。
(マグミクス編集部)