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スーファミ版『ストII』発売に歓喜! ゲーセンでは灰皿が投げつけられたことも…

最初からあきらめていた、公式全国大会

『STREET FIGHTER V CHAMPION EDITION』(カプコン)
『STREET FIGHTER V CHAMPION EDITION』(カプコン)

 そうしてプレイを開始した『ストII』は、アーケードよりもハードスペックで劣るスーパーファミコンとしては、おそらく限界に近い移植がなされているように思えました。

 グラフィックパターンが減っていたり一部の音が変更されていたりはしたものの、基本的な動きはアーケード版を踏襲しており、あくまでも筆者のレベルでは強い違和感を覚えることはありませんでした。当時は春麗を使用していましたが、アーケード版で苦しめられたダルシムの中パンチ投げハメを抜けやすくなっておりだいぶ楽に戦えたので、「アーケードでもこうだったらなあ」と少々残念にも感じていました。また、『ストII ‘』で大幅に弱体化されていた龍星落(空中投げ)の間合いが広かったため、竜巻旋風脚など宙に浮いているものをなんでもかんでも投げまくっては友人を驚かせていたことを思い出します。

 そんなある日のこと、『ストII』の公式全国大会が開催されるという知らせがもたらされました。すでにアーケード版では、ゲーム雑誌「ゲーメスト」が主催する大会が開かれていましたが、家庭用ではこれが初めてだったのです。それなりに腕に自信があったので出場するか迷いましたが、地域大会を勝ち抜いて決勝に進んだ場合、出場費用が必要になる点が壁になっていました。

 決勝大会が行われるのは両国国技館。当時、筆者は地方都市に住んでいたので交通費や食費、最悪宿泊費も必要になります。親からゲームをするのは反対されていたので、支援など期待できるはずもありません。「勝っても全国大会行けないなら、地域予選に出てもしょうがないよな」そう思い、大会そのものを諦めた筆者でしたが、ある日、普段一緒に『ストII』をプレイしていた仲間から「地域予選出たけど準優勝だった」と聞かされ、大きなショックを味わうことになりました。

 なぜなら、筆者はその仲間に負けたことがなかったからです。出たら高い確率で全国大会に行けた。お金のことはどうにかなったかもしれない。この無念さは、30年近くが経過しても未だに消えることはありません。

 そしてつい最近、友人のひとりが、筆者を遥かに超える無念を抱えていたことを知りました。彼は北海道で実際に地域予選を勝ち抜いたのですが、やはり費用がネックになり、国技館を断念していたのです。それも、2年連続で。

 筆者も友人も、既に対戦格闘から引退して久しく、再び戦うことはできません。試してみましたがまったく手が付いてきませんでした。

 近年では『ストリートファイターV CHAMPION EDITION』がeスポーツのタイトルとしてプレイされており、ベテランも若手も切磋琢磨し数々の名勝負を繰り広げています。あの頃どこにでもいた対戦格闘ゲーム好きのひとりとして応援すると共に、自分があの場にいないことを、とても残念に思っています。

(早川清一朗)

【画像】使われなかった、勝者のための国技館行きパスポート

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