無名の“宮崎駿”がブレイクした瞬間 『未来少年コナン』で見せた「天才」ぶり
宮崎駿監督の監督デビュー作『未来少年コナン』が、現在NHK総合で再放送中です。2020年5月14日(日)放送の第7話「追跡」、5月21日(日)放送の第8話「逃亡」は、前半戦のハイライトといえるエピソードです。若かりし日の宮崎監督の天才ぶりを、ぜひともチェックしてみてください。
「宮崎駿」の名前は、まだ無印状態だった

「西暦2008年7月、人類は絶滅の危機に直面した。核兵器をはるかにこえる超磁力兵器が、世界の半分を一瞬にして消滅させてしまった」。
そんなシリアスなナレーションで始まった、SFアニメ『未来少年コナン』。最終戦争から20年後の荒廃した世界を舞台にした、野生児コナンの冒険物語です。放送時37歳だった宮崎駿氏が、シリーズ全26話の演出を手掛けており、実質的な監督デビュー作として知られています。2020年5月3日より、毎週日曜の深夜にNHK総合で再放送中です。
NHK総合で『未来少年コナン』が初放映されたのは、1978年4月~10月。当時はまだ「宮崎駿」の名前は、一般の視聴者には知られていませんでした。『ルパン三世』第1シリーズや『侍ジャイアンツ』(ともに日本テレビ系)のキャラクターデザインを担当した作画監督・大塚康生氏の描く、洗練されていながらも親しみを感じさせるルックスのキャラクターたちが出ていたことから、気になってチャンネルを合わせていた子供たちが多かったように思います。
NHK初のTVアニメということで注目を集めた『未来少年コナン』ですが、1978年はスティーブン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』(1977年)やジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』(1977年)といった本格的なSF映画が日本で劇場公開された年でした。巨大UFOやライトセーバーでの戦いが描かれたハリウッド超大作に比べると、『未来少年コナン』はかなり地味な作品に感じられました。
第7~8話は前半戦の山場
今でこそ、暗い未来社会を題材にした「ディストピアもの」はSF映画の人気ジャンルとなっていますが、1970年代の日本の子供たちにはなじみの薄い世界でした。原作としてクレジットされていた米国の作家アレグザンダー・ケイの小説『残された人びと』も、まるで聞いたことのない題名でした。
『未来少年コナン』は面白いのか、つまらないのか。判断を下すのに迷っていた当時の子供たちの目を釘付けにしたのが、第6話「ダイスの反乱」です。太陽エネルギーの秘密の鍵を握る少女・ラナ(CV:信澤三恵子)は、科学都市インダストリアの中枢・三角塔に拉致監禁されていました。人間離れした身体能力の持ち主であるコナン(CV:小原乃梨子)は、三角塔を素手でよじ登り、ラナを救出しようとします。太陽エネルギーを独り占めしようとするレプカ(CV:家弓家正)、レプカを嫌うダイス船長(CV:永井一郎)、ラナを命がけで助け出そうとするコナン。三つどもえの争いとなるのです。
ダイス船長がラナを連れ去り、バラクーダ号でラナが育った島・ハイハーバーを目指す第7話「追跡」、続く第8話「逃亡」は、『未来少年コナン』前半戦の山場といえる人気エピソードです。『未来少年コナン』を未見の人に、「第7話、8話だけでも見てほしい」と思うほどです。