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『ガンダム』ドムの「左胸の謎装備」 初期アニメ描写は“目くらまし”だけじゃなかった?

『機動戦士ガンダム』の「黒い三連星」でおなじみのモビルスーツ「ドム」。左胸に付いている謎の武装は、いったん何なのでしょうか。

目くらまし?ビーム兵器?

左胸の丸い部分はナニ? 「MG 1/100 ドム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
左胸の丸い部分はナニ? 「MG 1/100 ドム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 2025年5月6日放送のTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』第5話では、すでに情報解禁されているように、一年戦争で「黒い三連星」として名を馳せたガイアとオルテガが久々に登場し、リック・ドムを駆って戦闘シーンを披露しました。この放送を機に、改めて注目したいのが「ドム」の特徴的な装備です。『機動戦士ガンダム』に登場した重モビルスーツ「ドム」の左胸に搭載された謎の装備、あれは一体何だったのでしょうか。

 ジオン軍のMS、ドムが初めて登場したのは、TVアニメ『機動戦士ガンダム』第24話です。十字のモノアイレールが特徴的な頭部に、袴(はかま)をつけた武士のような重厚なフォルムはいまなお古びることなく、その後も多くのプラモデルがリリースされ、派生型MSも数多く生まれています。

 ドムのメイン武器といえば宇宙戦艦をも撃沈する威力を誇る「ジャイアント・バズ」と、細長い竹刀のような「ヒートサーベル」です。しかし、忘れてはならない装備がもうひとつあります。左胸にマウントされた謎の兵器です。

 この装備が初めて使用されたのは、TVアニメ24話「迫撃!トリプル・ドム」のエピソードです。黒い三連星が2度目のジェットストリームアタックを仕掛けるシーンで、ガイアのドムの左胸から放たれた光は「ガンダム」を傷つけることはなく、攻撃の前の目くらましとして使われていました。この時点ではビーム兵器というよりもフラッシュのような描写でした。

 ところが続く第25話「オデッサの激戦」では、描写が大きく変化します。同じ拡散ビーム砲が、突如ビームライフルのように指向性のあるビーム兵器として描かれたのです。一貫性のない描写に、混乱した視聴者もいたかもしれません。

 さらに、TVアニメ放送後に公開された映画『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』では、再び第24話に準拠した目くらまし的な兵器として描かれました。

 その後の「ガンダムワールド」における設定では、映画版の描写が採用されたのか、ドムの拡散ビーム砲はカメラのフラッシュのような目くらまし装置として定着しています。アニメ第25話の描写は例外扱いとなり、破壊力のあるビーム兵器としては描かれていません。

 2001年発売の人気ゲーム『機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン』でも、ドムのサブ射撃として拡散ビーム砲が実装されていますが、射程距離はほぼゼロで威力もほとんどありません。ただし、うまくヒットさせると相手をひるませて連続攻撃につなげられるという、目くらまし機能を忠実に再現しています。

 後にガンダムワールドの拡大によって深堀りされた設定によると、実はこの装置、本来はビーム兵器用のエネルギーサプライ(供給口)として開発されたものの、ビーム兵器開発の遅れと出力不足のため、十分な威力を発揮できずに幻惑装置として機能することになったのだそうです。

 このような設定変更は、ガンダムワールドがより洗練されていく過程で見られる現象です。ドムはホバー移動しながらバズーカ砲を発射する重モビルスーツとして設定されており、そこにビーム兵器まで内蔵していると、当時の技術レベルでの性能面での整合性が取れなくなってしまいかねません。

 劇場版三部作以降、ミリタリーとSFの要素が充実した設定が定着したガンダムワールドでは、リアリティーを重視する方向へと洗練されていきました。初期に見られた「おもちゃっぽさ」よりも「兵器らしさ」が優先され、その結果、拡散ビーム砲も単なる目くらましという現実的な装備として再定義されたという見方もできそうです。

 ドムの左胸に搭載された拡散ビーム砲は、およそ45年にわたるガンダムシリーズの設定変遷を象徴する存在といえるでしょう。

(マグミクス編集部)

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