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「改変こそが仕掛け」「3次元では正解」 変えた部分も好評だった実写化映画

マンガの映画化では、「改変」が叩かれる作品も少なくありません。しかし、なかにはそういった原作からの変更も好評となった例もありました。

原作にいない男子に「なるほど」

映画『見える子ちゃん』ポスタービジュアル (C)2025「見える子ちゃん」製作委員会
映画『見える子ちゃん』ポスタービジュアル (C)2025「見える子ちゃん」製作委員会

 マンガが実写映画化される際、1時間半から2時間程度の上映時間に物語を収めるため、実写で不自然ではない描写にするためといった理由で、多くの作品で物語展開や設定に改変が生じます。オリジナルのキャラや場面が追加されることもあり、そういった要素が原作ファンから不評となるケースも少なくありませんが、なかにはまた別の魅力を生んだ実写版として評価された作品もありました。近年の例を振り返ります。

『見える子ちゃん』

 2025年6月6日から公開中の『見える子ちゃん』(原作:泉朝樹)は、「異形なヤバイやつら」が見えるようになってしまった女子高生「四谷みこ(演:原菜乃華)」が、それを全力でスルーしながら日常を送るホラーコメディーです。監督は『仄暗い水の底から』の脚本や、『残穢 住んではいけない部屋』の監督などで知られる中村義洋さんが務めました。

 本作は公開前、「原作では異形のバケモノとして描かれていたヤバいやつらが、はっきり人型の『霊』として扱われている」「みこがスルーせずに叫んでいる場面がある」「オリジナルの男子生徒キャラ『権藤昭生(演:山下幸輝)』がいる」などの、原作との違いを不安視する声が多数ありましたが、上映が始まると好評の意見も多数出ています。

 映画の序盤では、みこが「霊を無視しないとどんな目にあうのか」を学ぶという分かりやすい導入があり、問題の叫ぶシーンはこちらで出てきました。それ以外でも、改変要素こそが原作を読んでいる観客も驚かせる仕掛けとなっているのが、見逃せない点です。

 映画版の物語は、原作にもあるみこたちの担任「遠野善(演:京本大我)」と、彼に取り憑いているある霊の話が主軸で、またそこにみこの家族や、オリジナルキャラ権藤もからんできます。原作にもあったみこの「見える設定」を活かした仕掛けだけでなく、そこからさらにもう一段回驚きの展開が待ち受けており、レビューでは「原作改変部分もギミックに使ってんのがエグい」「中村義洋監督が大得意とする心霊系Jホラーと学園青春ものを掛け合わせた改変は大正解だと思う」「原作のまんまクリーチャーを出すと割と画面で浮いちゃって怖くないから、心霊系に変えたのはさすが」と、改変を評価する声も多々出ていました。

『カラオケ行こ!』

 2024年1月に公開された映画『カラオケ行こ!』(原作:和山やま)は、ある事情でカラオケがうまくならなければいけないヤクザ「成田狂児(演:綾野剛)」が、合唱部部長を務める中学生「岡聡実(演:齋藤潤)」にレッスンをしてもらうようになり、ふたりの間に特別な絆が芽生えていく物語です。

 映画版は「ヤクザと中学生の交流」という、そもそもの物語が持つ危うさを中和させるための細かい変更や、副部長の「中川(演:八木美樹)」ほか合唱部の女子たち、強烈な存在感を放った後輩の「和田(演:後聖人)」など各キャラの掘り下げ、原作にはない「映画部」とVHSデッキにまつわる描写など、さまざまな要素が足されています。

「映画『カラオケ行こ!』シナリオブック」では、脚本の野木亜紀子さんが監督の山下敦弘さんに、合唱部の女子たちを同じ和山先生の人気作『女の園の星』の女子高生たちの描写をイメージして演出してほしい、と伝えたことも明かされていました。そういった、原作へのリスペクトある工夫も盛り込まれた本作には、「劇中のセリフで『紅』(狂児の十八番)の歌詞のキーワードが強調されるのがよかった」「変声期と映研の巻き戻せないVHSを重ねて、『不可逆な青春』を描いてるのうますぎ」と絶賛が相次いでいます。

『サユリ』

 押切蓮介先生の人気ホラーマンガ『サユリ』は、2024年夏に映画化されました。

 夢のマイホームを手に入れた「神木家」が、その家に取り憑いていた女性の怨霊「サユリ」に次々と殺されていく、という衝撃的な内容の前半に対し、後半は生き残った長男「則雄(演:南出凌嘉)」と、認知症から覚醒した祖母「春枝(演:根岸季衣)」が、サユリへの復讐に打って出るという内容です。

 大まかなストーリーの流れは同じですが、家族の死に方の描写や起きる出来事はオリジナル要素が多く、原作とは違う家の「吹き抜け構造」を利用した意表を突かれるショックシーンもありました。

 後半の復讐パートでも、春枝が太極拳の使い手で、則雄がそれを習うというオリジナル要素があります。こちらは押切先生が「則雄がカンフーを使うのはどうか」と提案したところ、監督の白石晃士さんが「生命力という原作のコアな部分と合致する」という理由で気を使う太極拳に決まったそうです。また、パンフレットによると、映画オリジナルのサユリに対抗するための「放送禁止用語」のセリフは、白石監督が高校時代、金縛りにあった同級生に教えたところ効果があった言葉が元ネタとのことでした。

 映画ならではのパワフルな描写は評判となりましたが、後半ではサユリとその家族の過去(生前)にまつわる「えぐい改変」もありました。こちらも悲劇性を高めるためには効果的といえますが、苦手な方は要注意です。

(マグミクス編集部)

【画像】え…っ? お前そんな設定だったんかい コチラが『見える子ちゃん』実写版、効果的だったオリキャラです

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