史実改変ありすぎ、でも大好評だった大河『新選組!』の最終回 最後に叫んだ「アイツ」も爽やか
2004年放送のNHK大河ドラマ『新選組!』は、三谷幸喜さん脚本による異色の時代劇として知られています。香取慎吾さん演じる近藤勇を中心に幕末を描き、最終回では志に生きた男たちの姿が大きな感動を呼びました。
視聴率は振るわずとも視聴者が涙した最終回

2004年にNHK大河ドラマ第43作目として放送された『新選組!』は、数々の民放ドラマを手がけてきた三谷幸喜さんが脚本を担当し、「異色の時代劇」として大きな注目を集めました。香取慎吾さん演じる主人公「近藤勇」を中心に、激動の幕末を描いた本作の最終回は、大義のために命を燃やした男たちの姿が描かれた、感動的内容です。
物語は、農民出身の主人公「近藤勇(演:香取慎吾)」が、同志の「土方歳三(演:山本耕史)」や「沖田総司(演:藤原竜也)」らとともに「新選組」を結成し、京都で治安維持に尽力するというものです。しかし次第に倒幕派の勢力が強まり、新選組は追い詰められていきます。
三谷さんらしい軽妙なコメディー要素も随所に散りばめられ、特に序盤の近藤や沖田、土方らのテンポの良い掛け合いは、まるで漫才のような笑いどころとなりました。また、近藤たちが京都に行く前にのちの新選組隊士たちと出会っている、近藤が江戸で倒幕派の「坂本龍馬(演:江口洋介)」や「桂小五郎(演:石黒賢)」と知り合うなど、史実を大胆にアレンジしている点も大きな特徴です。
最終回の第49回「愛しき友よ」は、「甲州勝沼の戦い」に敗れた新選組が兵を集めて会津へ向かう計画を練るなか、流山で近藤勇が新政府軍に捕らえられる場面から始まります。そして新政府軍に激しく尋問され、斬首刑が確定してしまうのです。一方、土方は近藤の助命嘆願に奔走しますが、願いは叶わず宇都宮での戦いへと赴きました。
物語はあくまで近藤の視点に焦点を当てているため、土方の最期は描かれません。処刑シーンも、近藤が斬首台に向かう直前で幕を引き、死の瞬間は直接的に映さず、代わりにテーマ曲に乗せて新選組の歩みを振り返る映像が流れました。
また、メインキャラのひとりでムードメーカーの隊士「原田左之助(演:山本太郎)」が、処刑場の遠くから「尽忠報国の士 天晴れなり!新選組は不滅だー!」と叫び、お地蔵様のお供物を取って「俺も不滅だ!」とどこかへ走り去っていくさまも、さわやかです。彼は上野戦争で戦死したとも、生き残って馬賊になったともいわれていると説明が入りました。
視聴者からは、一部で「テンポ感のある会話が時代劇らしくない」「史実を知っていると違和感がある」など否定的な声もありましたが、「時代に振り回されながら、激動の時代を生きた新選組がかっこよくて、最後まで信念を貫いた姿に号泣した」「近藤の最後まで武士らしく死を受け入れる姿が清々しくて、最高のヒューマンドラマだった」「悲しいけど爽やかな終わり方で忘れがたい」と、歴代大河ドラマのなかでも名作と評する声が多くあります。
結末以外にも、本作には印象に残るシーンが数多くありました。たとえば、新選組総長の「山南敬助(演:堺雅人)」は、次第に組織の在り方に疑問を抱くようになり、自らの存在意義を見失っていきます。やがて、恋人である「明里(演:鈴木砂羽)」とともに、新選組の御法度である「脱走」をし、行方をくらましました。
その後、追手の沖田に発見された山南は隊規に従い切腹を命じられ、覚悟をもってその最期を迎えるのです。信念と規律、そして愛との狭間で揺れ動いた山南の決断に、多くの視聴者が涙しました。
本作は初回こそ26.3%(ビデオリサーチ、関東地区)と衝撃的な高視聴率を記録したものの、最終回までの平均視聴率は17.4%にとどまり、歴代大河ドラマと比べると苦戦した面もあります。しかし、2005年2月に発売されたDVD‐BOXは初週売り上げ7000枚、2億7000万円を突破し、その人気を証明したといえるでしょう。
また、本作は大河ドラマとして初の続編『新選組!! 土方歳三 最期の一日』が2006年の正月に放送され、本編では描かれなかった近藤の盟友、土方歳三の最期が描かれています。宇都宮での戦いから函館へと舞台を移し、旧幕府軍の一員として最後まで戦い抜く土方の姿は、視聴者の心に深い余韻を残しました。
(LUIS FIELD)