『ガンダム』宇宙世紀における「オールレンジ攻撃」の限界 ←普及するワケがなかった
『ジークアクス』でも話題となった「オールレンジ攻撃」は、『機動戦士ガンダム』終盤で登場し、一時大いに猛威を振るうものの、宇宙世紀が下るにつれ衰退していったように見えます。そこにはやはり限界というものがあったようです。
なぜ無敵のオールレンジ攻撃は廃れていったのか

『機動戦士ガンダム』シリーズにおいて、鮮烈な印象を残す戦法のひとつが「オールレンジ攻撃」です。これは、母機から分離した遠隔操作兵器によって全方位から攻撃を行うというもので、最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』においても重要な位置を占めています。
その強みは、敵の周囲に複数の攻撃端末を展開できる点にあります。それにより、敵はこちらの攻撃回避が極めて困難になり、また攻撃端末から一斉にビーム等を発射することで飽和攻撃が可能となります。さらに、攻撃端末をリモート操作することで、本体は安全を確保しやすいという点もあるでしょう。
この戦法は、ニュータイプや強化人間の空間認識能力を最大限に活かし、立体的な攻撃も実現します。逆にいえば、通常のパイロットには扱うことができません。
この戦法を初めて使用したのは、初代『機動戦士ガンダム』の「シャリア・ブル」が搭乗するモビルアーマー「ブラウ・ブロ」です。この機体は、母艦とケーブルで接続された遠隔ビーム砲(連装2基・単装2基)を搭載しており、有線方式は一見すると時代遅れに見えるかもしれません。しかし、ほぼ無敵を誇った主人公「アムロ・レイ」を苦しめ、大善戦を繰り広げました。
実は、有線方式には大きな強みがふたつあります。ひとつは、敵ニュータイプに思念波を察知されにくいことです。もうひとつは、母機から直接エネルギーを供給できるため、威力や連射性能に優れている点です。つまり、「動きを読まれにくく、一撃必殺のビームを全方位から連射できる」というもので、初見で対応できたアムロは規格外の存在だったといえます。
オールレンジ攻撃は、「ララァ・スン」専用のモビルアーマー「エルメス」によってひとつの完成形を迎えました。主武装の「ビット」は、サイコミュを介して無線で操作される遠隔攻撃端末です。それぞれが熱核反応炉を内蔵しており、長時間の稼働と高出力のメガ粒子砲を可能にしました。ビットは10基以上もあり、「真の全方位攻撃」が可能となっています。
しかしアムロは、ここでもすぐにビットの攻撃に対応しました。劇中では「ビットの移動先を先読みしてライフルで撃ち落とす」という離れ業が描かれており、これはビットに送られた感応波を察知していた可能性もあります。いずれにしても、相手がニュータイプである場合、オールレンジ兵器にも限界があるのかもしれません。
また、ララァが「シャア・アズナブル」に向かって放った「大佐、どいてください。邪魔です」という名セリフも、オールレンジ攻撃の「味方を巻き込むおそれがある」という欠点を象徴していたのでしょう。
その後もオールレンジ攻撃は進化を続けます。シャアが搭乗した「ジオング」は、有線式のサイコミュにより無線の欠点を克服しており、本体が見つかっても頭部を分離して脱出できる機構を備えています。これらは、ララァの戦いを教訓にした改良といえます。
さらに一年戦争から7年後を描く『機動戦士Zガンダム』では、平均的なMS(モビルスーツ)サイズで初めてオールレンジ攻撃を実現した「キュベレイ」が登場します。その遠隔操作兵器「ファンネル」は、エネルギーCAPという事前チャージ式の技術によって小型化に成功しており、MSとしての機動性も両立していました
とはいえ、オールレンジ兵器が普及したとは言いがたくあります。その背景を象徴しているのが、一般兵でも扱える遠隔操作兵器「インコム」です。「ドーベン・ウルフ」などに搭載されていますが、「敵の死角には回り込めるものの、ビットのように立体的な制御ができず、2次元的な挙動にとどまる」という制約があります。
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の最終決戦では、アムロの「νガンダム」とシャアの「サザビー」が、互いにファンネルを使った格闘戦を展開しました。ここまで完全に使いこなせたのは、このふたりのニュータイプ以外には考えにくく、オールレンジ攻撃がその後、衰退していったのも納得できるところです。
(多根清史)




