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手軽にバンド体験ができた『バンブラDX』 12年経っても忘れない”作曲の奥深さ”

2008年6月26日、任天堂よりニンテンドーDS用ソフト『大合奏!バンドブラザーズDX』が発売されました。『大合奏!バンドブラザーズ』の続編にあたり、「ニンテンドーWi-Fiコネクション」を利用して追加楽曲のダウンロードが可能でした。

作曲・演奏の楽しさを教えてくれた『大合奏!バンドブラザーズDX』

『大合奏!バンドブラザーズDX』(任天堂)
『大合奏!バンドブラザーズDX』(任天堂)

 通勤・通学のお供にプレイリストを再生する。耳に残るメロディーラインを何となく口ずさむ。「楽器が弾けたらカッコいい!」と思い立ち、ギターを始める。ストレス発散のために、大人数でカラオケルームにこもる等々、我々は少なからず”音楽”と関わりを持って生活しています。

 ゆえに音楽に対する原体験は十人十色。筆者の場合は中学生の頃、ニンテンドーDS(以下DS)用ソフト『大合奏!バンドブラザーズDX』(以下『バンブラDX』)をプレイし、誰かと一緒に演奏する楽しさ、そして拙いながらも作曲の奥深さを学ぶことができました。

 2008年6月26日にリリースされた本作は、前作『大合奏!バンドブラザーズ』(以下『バンブラ』)のゲームシステムを踏襲したシリーズ第2作目です。各種ボタンとタッチ操作を使い分ける”演奏”システムが特徴で、プレイヤーはギターやベース、ドラムといった各パートを選び、実際のバンドさながらに楽器を担当。4段階ある難易度を適切に選べば初心者でも充分に演奏を楽しめたほか、誰かひとりがソフトを持っているだけで、最大8人までのセッションも行えました。

 一方でシリーズ恒例の演奏のみならず、自ら「歌う」ことをメインに捉えた新システムも実装されています。こちらは収録済みの31曲&ダウンロード楽曲(後述)の歌詞を表示させ、DSのマイクへ向かって歌声を吹き込むと、『バンブラDX』がプレイヤーの歌声を文字通り診断。声質やリズムの取り方を記録し、オススメの楽曲を教えてくれる……という内容でした。また、キー選択や採点機能を有したカラオケモードも搭載しており、「友達とカラオケへ行く前に『バンブラDX』で練習しておこう!」といった使い方もできたのです。

作曲を通して音楽の深淵に触れた

 前作をベースに遊びやすく進化した演奏と、シリーズ作品の新たな可能性を見出したカラオケモード。これら2つの軸に並び、『バンブラDX』より登場した「楽曲ダウンロード」機能が、本作のコミュニティを一層盛り上げていました。

 作曲モード自体は『バンブラ』にも収録されていましたが、本格的な楽曲投稿が可能になったのは本作が初。従来はサーバーへの直接アップはできず、またソフト内部に保存できる楽曲もごく少数のため、自由度が限られていたのです。オリジナル楽曲を手がけた有志の中には、自前のウェブサイトや掲示板などに楽譜データを掲載するユーザーも見られました。

 しかし、『バンブラDX』の発売から状況が一気に好転します。というのも、任天堂とJASRACが築いた協力体制により、J-POP・ゲームBGM・歌謡曲・アニソン・洋楽など、JASRACに登録済みの作品を元にした自作曲を気軽に投稿できるようになったのです。

 加えて、任天堂のサーバーから楽曲を無料でダウンロードできたのも魅力。この取り組みが功を奏したのか、本作は発売間もない頃からユーザーの自作曲が常時アップされ続け、最終的には9000曲以上の楽曲がサーバーに並ぶ運びとなりました。

 当初は筆者もダウンロードサーバーの人気楽曲を演奏する日々を送っていましたが、一緒に本作を遊んでいたクラスメイトと協力し、「自分たちも何か曲を作って投稿しよう!」と決意。現在のように動画サイトが最盛期を迎える12年前、『バンブラDX』のコミュニティシーンに触発される毎日を送ることになったのです。

 とはいえ、仲間内に一から楽曲を手がけた者などおらず、作業は当然のように難航。しかも『バンブラDX』は楽曲の投稿こそ気軽に行えますが、ユーザーの目に留まるダウンロードサーバーへ移行されるかは任天堂次第。運営陣の審査に通らなければ、投稿した楽曲がユーザーの元へ届くことはありませんでした。

「クオリティが低いままだと、審査落ちは免れない」。そう危機を感じたのか、最初は簡単に作曲できる「ハナウタ作曲」に頼っていたメンバーも、段々と五線譜とにらめっこしながら「本格的作曲」へと移行。筆者は不器用ゆえ、最終的に満足いく作曲は叶いませんでしたが、仲間内のひとりがとあるJ-POPソングの投稿に成功し、自分ごとのように喜んだのを強烈に覚えています。

 過程は乱雑ながらも、ゲームを通して楽曲の演奏に親しみ、作曲を経て音楽が秘める奥深さの一端に触れた『バンブラDX』。本作のインターネット通信サービスが全て終了した今でも、部活を彷彿とさせる”バンド活動”の経験は色あせることなく、心に留まり続けています。

(龍田優貴)

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